「角度を変えると見えてくる「別の真実」。」でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男 ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)
角度を変えると見えてくる「別の真実」。
「冤罪」を晴らす物語である。こどもに体罰を加えたとして両親から告発があった教師が、自らの罪を晴らすまでがとてもドラマティックに描かれている。悪い奴らが乱暴なほど明確になっているので、何も考えずに映画の世界に没入しやすい作りになっている。たぶん、殺人教師にされた薮下の苦悩を観客は共有するため、エンディングで罪が晴れた時は一種のカタルシスを感じるだろう。そして湯上谷弁護士や支えてくれた家族に感謝の気持ちがあふれて満足感を覚えるだろう。一方で真実を見ようとせずに薮下を罪に陥れた人々には強い憤りを感じる。事実を明らかにせずに一方的に薮下を断罪した校長、教頭、教育委員会。被害者の子の母親の話を鵜呑みにしてセンセーショナルな記事で世間を煽った週刊誌記者。真実を確かめずに原告に乗っかった弁護士軍団など。「正義」や「体面」を前面に押し出すとこんなことが起こるんだと分かりやすく描いている。誰も(映画の中では)薮下に謝罪していない。おそらくみんな、本人には申し訳ないことをしたかもしれないが、職務でしたことであって自分には責任がないと考えているのだろう。これも恐ろしい。
冤罪を晴らす薮下と湯上谷弁護士の奮闘と家族の支えは心温まるヒューマンドラマである。一方、冤罪を作り出す側はコメディかホラーである。母親律子とその夫のモンスターペアレントぶりが怖すぎる。詐欺師でなければ何かにとりつかれた精神病者である。ろくな調査もせず、保護者に迎合するように薮下に罪を着せる校長と教頭の掛け合いは、バカを演じるコントのようである。550名も弁護士が原告側に集まった経緯に興味があるが、法律家のくせに「真実を疑わない」おバカさん集団である。彼らの側にも調べればそれなりの事情があるだろうが、この映画では不要である。これもある意味一方的な真実である。
名優たちの熱演に乗せられて、「真実を疑う」ことの大切さを教えてくれる作品でした。