「小林薫演じる弁護士の理性が光る」でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男 ジョーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 小林薫演じる弁護士の理性が光る

2025年7月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

怖い

知的

暴力教師、モンスターペアレント、問題児。様々な角度から見ると、知らず知らずのうちに、自分を取り巻く環境が、そのどれかにあてはまってしまう危険性。ボタンの掛け違いの恐ろしさ。そんな世界を三池監督が鋭く切り込む。

息子のクラスの担任を暴力教師に仕立て上げる母親の目から見た映像。この映像は、いかにも三池ワールド。このまま行くと、あてどない三池ワールド全開と思いきや、それは最初だけ。その後の三池ワールドの全開を阻止したのは、濡れ衣を着せられた教師の弁護士役の小林薫。 彼の正義というより理性が前面に出た弁護士ぶりが、本作を完全にヒューマンドラマに変えたと言ってよい。また、モンスターペアレント役を演じた柴咲コウよりも、むしろ裁判で訴えられた教師を支える妻役の木村文乃のひたむきな演技に軍配を上げたい。

是枝監督の「怪物」もそうだった。食い違う教師の言い分と親の言い分の間で、子供にその軍配を委ねることの難しさ。父兄から言われると、同僚を少しもかばえない校長らの逃げ。大人の目と子供の目の平行線。それらを、不条理が横行する裁判の中で改めて痛感した。

ジョー