「リラルホラー」でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男 とうきさんの映画レビュー(感想・評価)
リラルホラー
今までにも「冤罪」をテーマにした映画はいくつもありましたが、またひとつ、心を震わせる作品に出会いました。
ポイント:
◯ 原告と被告、それぞれの供述に基づく主観の違い描写から始まります。特に自分は、最初これが実話だと知らずミステリー作品だと思って観に行ったので、視点の違いに驚かされ、最初はどちらが本当なのか分かりませんでした。その両面性を見事に演じ分けたキャストの演技、特に主人公が大変素晴らしかったです。
◯ 勝訴しても素直に喜べない、そのリアルさ。弁護士との会話や家族とのやりとりの中にも心に刺さる瞬間が多くありましたが、映画は観客の涙を過剰に誘うことなく、ただそのまま物事を語る姿勢が好印象でした。想像を絶する体験を経た人間が、簡単に立ち直れないのは当たり前です。爽快な逆転劇もなく、心の傷も簡単には治れません。ただ、支えてくれる人がそばにいれば、少しずつ前へ進むことができる、ただそれだけです。
◯ 裁判後にも物語が続きがあった。「冤罪」を扱う映画では、被告がその後どうやって社会復帰するかの描写が省かれがちですが、本作では少しとはいえ、その様子が描かれていて良かったです。個人的には、処罰の取り下げで終わっていれば完璧だったとも思いますが、あのラストを加えたことで、さらに考えさせられることがありました。
一応これは民事事件なので、厳密には「冤罪」という言葉は適用されませんが、世論やメディア、さらには虚偽の主張をした保護者団体によって理不尽な断罪を受けたという意味では、まさに「冤罪」と言っても差し支えないでしょう。こうした事件が起きるたびに思うのは、なぜ人間は事実無根の情報に対してこれほどまでに過激に反応してしまうのか。映画には描かれていないが、その教師の奥さんや息子、またほか関係者の方々もきっと大変バッシングを受けたことでしょう。たとえ事実だとしても、他人を攻撃したり、感情的に断罪したりする理由にはなりません。そして、もしまだ事実が明らかでない段階であれば、なおさら冷静さを失わければならないことです。
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