「本当に悪いのは誰か?」でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男 キョンリさんの映画レビュー(感想・評価)
本当に悪いのは誰か?
原作未読。
伏線にしているのかどうなのか分からないが台詞の中に「1番悪いのは誰なのか?」という言葉が出てくる。
薮下の冤罪は最後には晴れる訳だが決して最初から正しい人ではない。正しい人ならば教師である以上、生徒が見ていない所でも教師であるべきだった。校長や教頭に対してやってない事はやってないと断固2人の要求を蹴るべきだった。例え職を失う結果になっても…
氷室律子は裕福な家に嫁いだことが画面でも分かるが決して夫の拓馬とは上手くいっていない雰囲気を醸し出している。が、薮下を責める時だけはその分裂した細胞は一体化する。
そして我が子に対する異常なまでの愛情。次第に想像や妄想が迷走を始める…
その母の重過ぎる愛情を背負いきれずに持病と相まってつい先生に虐められたと嘘を吐いてしまう息子拓翔。母の愛は牙と化して薮下に向けられる。憎悪、復讐心が膨張していく…
最悪なのは綿密な取材も裏取りもせず安易に薮下を悪人に仕立てようとするマスコミ。
それらに煽られる人々。
550名と異常な人数とも思える原告弁護団。
大した診察もせずにPTSDと診断した利益主義の担当医。
結果、薮下の味方はこの時点でどこにもいない。後悔しても時は戻らない。
氷室律子ただ1人の言動に当事者達も世の中も踊らされる。何故そこまで?という疑問は残るがそんな事は鑑賞後に整理しろと言わんばかりにこの作品はどんどん観ている者を引き込んでいく。
果たして1番悪いのは誰か?感情移入の仕方によって答えは変わってくるが、もしかしたら1番悪かったと自覚しているのは冤罪を晴らした薮下本人なのかもしれない…
唯一の救いは被告弁護人と薮下の家族。特に被告弁護人は神様に見えた。
薮下の細君は亡くなったの?
上手く世渡りしたのは校長と教頭…
この2人の存在があるからこそ、この実話により真実味を持たせている訳だが…
現在も20数年前と全く変わっていない不条理な世の中…
自分だけは御都合主義に流される事なく生きていかなくてはと思えた意味のある作品でした。自分自身を信じて生き切る事は死ぬ事よりも辛い世の中ですが…
1番良かったのはこの作品に出会えた事…
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