「観せ方が卓越した監督作品」でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男 HGPomeraさんの映画レビュー(感想・評価)
観せ方が卓越した監督作品
不謹慎かもしれませんが、面白かったです。
実話に基ずくという事だけの知識で鑑賞。
あの番宣広告の綾野剛さんの表情とキャッチコピーからの、あのオープニング。
……100%騙されました!
ほとんどの人が同じ経験をすると思えました。
三池監督の得意な表現がバイオレンスのようなのですが、……あの導入映像はまさに恐怖感や怒りを植え付けられ、どうしようもない「先入観」が確立し、そこからの180度真逆のストーリー展開開始に、ずっと見逃すまいと、夢中にさせられました。
多くの映画が監督の得意分野に左右されることが多いと思いますが(当たり前ですが)、三池監督がバイオレンスだけという訳ではなく、人物描写や映像の観せ方そのものが素晴らしいと思いました。
しかも変に内容を混濁させず、鑑賞者の期待を裏切らない進行。
なのに面白い映画。中々に貴重です。
ちょっとした「違和感」の観せ方も、創造の範疇で気持ちよく鑑賞できました。
話は変わり、実話を基にしている物語である事に関しては、何とも曖昧な世の中に簡単に壊される人生なんだなと思わされました。
誰が悪いとかは議論にならない点だと思い、いかに「でっちあげ」に対し、当事者が積極的に反論と行動を論理的にしかも強い精神で諦めず、曲げず訴え続けられるか。
しかしそんなことが現実的にできない人も多いとは思いますが(自分もどう行動するかわからない)、法律的に倫理的に「でっちあげ」の被害を受けたら、何とか奮い立って正面から突破する気持ちを諦めないで行動すれば、「敵」と描かれているメディアは、むしろ味方になるのかもしれないと思えました。
……ただし、そこには加害者を徹底的に叩くメディアの構造がどっちに向けられるかが変更するだけなので、「メディアの有り方」というのが、まさに怖く、防ぎようがない媒体。
SNSも然り、声を表現する人間によってどうとでもなる可能性が高いので、やはり倫理観が一番重要であるとも思いました。
現代のメディア市場は、人類史上恐らく最も拡散される時代なので、影響力のある人間の拡散力はどうにも強いです。
もしその対象になってしまった時は、同じようにメディアを大いに利用し、法律的にも圧倒的な証拠固めをして説き伏せる忍耐と精神力で、自信を持って反論し続ければ必ず救われるという事でもあるかなと。
なぜなら、「でっちあげ」だから。
被害者はつらいと思いますが、何とか諦めず、周囲の助けを借りながら必ず打ち勝ってほしいと思い、また、周囲の倫理観のある人は、しっかりと手を差し伸べなければならないかなと思いました。
手を差し伸べる方法は、劇中に描かれているような、保身を伴っても良いと思うので。
最後に描かれていた加害者側のその後も気になるし、やはり倫理観をしっかりと持たないと人生が狂うと思わされた映画でした。
加害者当人の人生苦が描かれている部分も重要で、「親」のあり方も、最重要である事が言える作品でした。
被害者側の「親子関係」と加害者側の「親子関係」が、相対性をもって描かれていると思えましたので、親の子供に対する教育や愛のあり方が非常に重要とのメッセージ性もあるのかなと思いました。
良い作品でした。
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