「観た後に怖さが持続する良質なホラー映画に似た恐怖」でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
観た後に怖さが持続する良質なホラー映画に似た恐怖
よくこれ、映像化したなという驚き。
いわゆるモンスターペアレンツによる、嘘と言いがかりとでっちあげの冤罪によって、一人の教師が追い詰められていく姿が描かれており、吐き気すらしました。
ホラーとサスペンスを得意とする「ヴァイオレンス映画の匠」三池監督の技量と、柴咲コウのサイコパス演技によって、もはや恐怖映画のレベルまで上がっていたような。
また、亀梨和也が(文春のN記者に相当する)「週刊春報」の鳴海記者を演じていて、その信じられないほど裏取りしない記事の書き方や、誠実さのないチャラさを浮き彫りにしていて、腹立たしさを伴いつつ、また怖さを感じました。
もしもこの彼ら(原告の両親と子供)が本当に危ない連中だとしたら、(映画本編にもセリフとしてありましたが)今どこでどうやって生きているんだかは、知りようがないわけで。
またどこかで冤罪を生んでいるんじゃないか、もしも生活圏に彼らや、彼らに類似した存在が出現したら?と想像してしまったら、現実世界も怖くなりました。
質のいいホラー映画を観た後と、同じような効果がありました。
と同時に、当時教師へ謝罪を強要した元校長や教頭、教育委員会の連中は何ら処罰されておらず、また教師に対しての謝罪も補償もされていないようなので、理不尽だなと思いました。
ただし、この映画はやはりエンタメとして演出されていることには留意が必要かと。
直近公開だった『フロントライン』と同様に、徹底した取材によるドキュメントを下敷きにしていても、ある意味「善悪を二極化した創作物語」であり、捏造を生んだ親子や文春の悪意が強調されているわけです。
観終わってからググって、裁判の判決文などもろもろ読んでみまして、その結果から考えれば、原告の母親と子供が嘘をつき、冤罪を生んだことは明らかではあるものの。このとおりだったかは裁判に関わった当事者しかわからないわけで。
映画を事実として一方的に信じてしまい、この親子や文春を改めて叩くのは、当時のマスコミを一方的に信じて教師を叩いた大衆の行為と何が違うのか?
一市民としては、安易にネットや報道を信じたりせず、裏取りをされていない証言を鵜吞みにせず、一方的な正義を振りかざしてリンチをする側に回らず、陰謀論などにもはまらず生きることが大事かなと。
他人の不幸を見て「叩いていい相手」と思い、娯楽として炎上に加担するのって、正直ドン引きするレベルで醜悪ですよね。
SNSでは本作を指し、「オールドメディアだから、マスゴミが悪い」みたいに言う人もいますが、メディアがSNSや動画に代わっても、裏取りをしないで無責任に噂やフェイクを垂れ流すのは一緒。
インフルエンサーこそ、本作の鳴海記者と何が違うのか、一番信用ができません。
むしろ、気軽にでっちあげできるツールが増えていて、危険度は以前より上がっていると思いました。
今後も、遠くの真偽のわからない事件に踊らず、自分の目の前にある問題や生活、家族に集中して生きていきたいと思いました。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。