「罪のない者ならば意思を投げよ」でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男 uzさんの映画レビュー(感想・評価)
罪のない者ならば意思を投げよ
鑑賞直前になって原作がルポタージュだと知ったが、あえて経緯も判決も真実も確認していない。
言ってみれば『怪物』の保利を突き詰めたような話なのだが、観ていて非常に苦しかった。
裁判までいかずとも、友人との諍いやクレーム対応などで似たような思いをした人は少なくないと思う。
“信じてもらえない”というのは事実以上に辛いのです。
とはいえ自分は常に薮下のことも疑いながら鑑賞しており、事実を調べなかったのもそのためだ。
十分な確証が得られるまで断定して断罪すべきではないし、だから鑑賞後も疑念の欠片は捨てていない。
100%の真実など当事者の中にすら無いと思うから。
学校側の保守的かつ保身的な対応は杜撰ではあるが、いかにもありそう。
記者が面白半分や数字目当てではなくあくまで(少なくとも作中描写では)正義感という演出は少し意外。
このあたりは結構リアルだったが、原告側の弁護士があまりにガバガバだったのは少し気になった。
事実と言われたらそれまでなのだけど、学校側と違いプロなのに事実確認してなさすぎだろ。
550人の弁護団、仕事しなさい。
拓翔が嘘を吐いた理由は分かったが、律子があそこまでした動機は分からず終い。
すぐ隣にいたのだから副担任は証言してやれよ。
最後の奥さんが亡くなっている描写は、事実であっても(誠一が墓前に報告するなどないなら)不要では。
2視点での演じ分けは、綾野剛や柴咲コウのみならず拓翔役の三浦綺羅くんも非常に見事だった。
他の配役も的確で、バランス含めて演技は文句ナシ。
意見陳述での綾野剛による、感情的にならずに感情を滲ませる訴えは静かなクライマックスに相応しい。
勧善懲悪的にも感動的にもしない、苦味のある後味も含めて、テーマに寄り添った真摯な作品でした。
コメントありがとうございます!
客席が傍聴席…まさにそのお言葉がピッタリだと思います!
また、仰る通り本作は記者が数字の為と言うよりは、彼なりの正義で動いているように見える点は何とも考えさせられる描写でしたね。難しい問題です。
「100%の真実など当事者の中にもない」
これはその通りですね。何度も話しているうちに何が正しいのか分からなくなり、自分作った物語を繰り返してしまう事はよく聞きます。人間の記憶なんてそんなもんです。
確かに500人超えの巨大弁護団は何も仕事してませんね(笑) あんな初老の弁護士ひとりにやられちゃうなんてダメダメですよ。
常に疑いを残すのが大事、おっしゃる通りだと思います。自分自身、自分の都合の良いように、あるいは信じたいように本作を観ていたかもと、あらためて気づきました。ありがとうございます。
原作を読む限り、奥さまが10年後のあの時まで(教育委員会の処分取り消し)に亡くなったとの記述はなかったので、あれも過剰演出のひとつのようです。
冒頭に〝真実に基づく話〟と謳っているのだから、泣かせにかかるような余計なことをすると、かえってこの問題の本質的な部分が薄れてしまうような気がしました。
共感ありがとうございます!
uzさんが書かれている通り、尺の問題かもしれませんがちょっと物足りない(というか本当の原因が知りたい)部分が多々ありますね。
律子の母親らしい人物はうっすらと写ったものの、生育環境は団地の階段で放置されていた所と、小中学校の教室での短いストーリーだけで、親との関係は不明のままだし、500人超の弁護団がどんな経緯で出来たのかもわからないし、薮下の監視役の同僚が問題なく授業をしているのを確認しているのに一度も擁護側に立つことがなかったり、人権弁護士の湯上谷が出てくるまではモヤモヤしていました。
最後の仏壇にチーンの部分はいらなかったですよね。仰る通り墓前に報告の方が心に刺さりますよね。
共感ありがとうございます。
奥さん、やっぱり亡くなったのですかね?
奥さんの声で「勇気は教育実習だよ」みたいな声かけありませんでしたっけ……だから、「あれ?」と思ったのですが……。