「大の大人が何をやっているんだろう感は凄いけど、青春ってこんなものなのかもしれません」やがて海になる Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
大の大人が何をやっているんだろう感は凄いけど、青春ってこんなものなのかもしれません
2025.10.30 イオンシネマ四條畷
2025年の日本映画(90分、G)
地元で映画を撮ることになった若手監督とその幼馴染たちとの交流を描いたヒューマンドラマ
監督は沖正人
脚本は沖正人&鈴木太一
物語の舞台は、広島県にある江田島
生まれてから向かいにある呉以外に出かけたことのない修司(三浦貴大、高校時代:後藤陽向)は、父(柳憂怜)の死後ずっと、うだつの上がらない生活をしていた
父の残した畑を手伝うわけもなく、地元でブルーカラーとして働いて、日々の酒代を稼いでいた
ある日のこと、修司の幼馴染の和也(武田航平、高校時代:市村優汰)が自身の監督作を地元で撮るというニュースが舞い込んできた
島は色めき立ち、記者会見が行われるなど盛大なものになっていたが、和也はいまだに映画の結末に悩んでいて、これだというものを思い描けていなかった
彼の映画は、母・真紀子(占部房子)との別れ、高校時代の恋人・幸恵(咲妃みゆ、高校時代:川口真奈)との別れなどがメインとなっていて、そのためか幸恵は撮影現場に姿を現さなかった
彼らは三角関係の状態だったが、和也の東京行きによって関係が壊れていて現在に至っている
和也は誰かと結婚することもなく独り身で、幸恵は店の客と不倫関係になっていて、それを本気の恋愛だと修司に告げる
だが、修司は幸恵の幸せを思い、和也と復縁することを望んでいたのである
映画は、自伝映画を撮る中で自分の気持ちを整理する和也が描かれ、彼との再会の中で自分の気持ちを整理する修司が描かれていく
ラストでは青春映画さながらのシーンが登場するが、この三人だけで盛り上がっている感が凄くて、撮影クルーを放っておいて青春に興じているのは何だかなと思ってしまった
元より「初の監督作品」と紹介されていたので、これまでの和也の実績というものがわからなかった
これまでに何らかの映像コンテンツを作って成功していたのか、あるいは俳優として活躍していたのかなど、彼自身の社会的な立ち位置と言うのは不明のまま
地元のヒーローのような扱いなので、島民としては誇れる実績を持っているのだと思うが、それが何なのか明示されないのはナンセンスだったように思えた
映画的には、本物の遺灰を使って撮影をしたことになっているが、このエピソードが宣伝に使われているのか、クルーの中だけの秘匿になっているのかもわからない
映画はちゃんと完成して、試写会を開くことができたものの、その評価というものも描かれていないので、着地点が曖昧すぎるようにも思えた
いずれにせよ、高校時代で止まっていたものが動き出したということになっているのだが、恋愛感情をすでに無くした者同士をくっつけようとする修司のマインドは最後まで理解できなかった
幸恵は修司が本気なら一緒になったと思うし、その覚悟が彼にはまだ持てなかった
修司自身は父の死が自分の写真撮影だと思い込んでいたのだが、実際にはそれは都合の良い理由であり、ぐうたらな自分であることを肯定する理由が欲しかったのだろう
幼馴染との再会で何かが変わったわけではないが、腹の底から声を出してけじめをつけたことで、そう言ったものを取っ払うことができたのかもしれない
ストンと何かが落ちてくる映画ではなかったが、随所に面白いなと感じる部分があったので、それはそれで良いのかな、と思った
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