「リメイクであることがなぜか伏せられているが、翻案は秀逸」秘顔 ひがん 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
リメイクであることがなぜか伏せられているが、翻案は秀逸
2011年のコロンビア・スペイン合作「ヒドゥン・フェイス」(配信タイトルは「密室の女 奪われた情事」)の実に4度目のリメイク(過去にインド、トルコ、メキシコで作られた)。ところがどういうわけか、メディア向け資料にもキム・デウ監督の公式インタビューにも、この「秘顔 ひがん」がリメイクであることに言及がない。原作があるにせよ、設定や展開に手を加えて独自の面白さを生み出しているのだから堂々と言えばいいのに、姑息に元ネタを隠す印象で損をしているような。
ともあれ、指揮者の男性A、そのフィアンセで別れを告げる録画を残して消えた女性B、指揮者と新たに恋仲になる女性Cという3人の主要人物は据え置かれている。ただしオリジナルではBの失踪後にAとCがたまたま出会う(BとCに面識はない)のに対し、「秘顔」ではBとCを旧知の関係に設定変更したことで、3人の感情の絡み合いがより複雑に濃密になっている。時間軸を2回に分けて戻すことで段階的に種明かしをする語り口も、オリジナルよりスムーズでスマートだ。ラストのインパクトと余韻も韓国版がまさっている。
ともあれ、これは事前にあまり情報を仕入れずに観るほうが楽しめるタイプの映画なのは間違いない。日本で公開される韓国映画としては性的描写がかなり強烈でR18+に指定されているが、このジャンルが好きなら観る価値はある。オリジナルの映画と見比べると、「秘顔」の巧みな改変にきっと感心させられるだろう。
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