「現代版にリブートされているけれど、忠実すぎるところに物足りなさが残るかも」タイヨウのウタ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
現代版にリブートされているけれど、忠実すぎるところに物足りなさが残るかも
2025.5.22 字幕 MOVIX京都
2025年の韓国映画(109分、 G)
邦画『タイヨウのうた』のリメイク作品
色素性乾皮症の女性を描いた音楽映画
監督&脚本はチョ・ヨンジン
原題は『태양의 노래』で「太陽の歌」、英題は『Midnight Sun』で「真夜中の太陽」という意味
色素性乾皮症(XP)を患っているミソル(チョン・ジソ)は、紫外線を浴びることができず、日中はすべて家の中で過ごしていた
彼女の楽しみは、家の前に来るフルーツ売りの青年ミンジョン(チャ・ハギョン)で、その想いは親友のオッキョン(クォン・ハンソル)ももどかしく思うほどだった
ミソルは幼少期に褒められたことがきっかけで歌を続けていて、今では自作の歌を歌うこともあった
だが、人前に出られないミソルは、その歌を父グァンギル(チョン・ウンイン)と母キョンスン(チン・ギョン)に聴かせることしかできなかった
ある夜のこと、珍しく夜にミンジョンがやってきて、ミソルは靴を履くのも忘れて路上へと飛び出した
大きな声で呼び止め、それに反応した彼は車を停めた
ミソルは「昼が会社員なので夜しか買えない」と咄嗟に嘘をつく
ミンジョンは店の名刺を渡して、「買いたいときはいつでも呼んで」と伝えた
物語は、その後うまく親交を深める様子が描かれるものの、病気のことをなかなか伝えられない状況が続いていく
ミンジョンはミソルの歌をもっと多くの人に聴いてほしいと思い、公園の野外ライブに連れて行ったり、動画配信のアイデアを伝えたりする
そしてミソルは、自分のチャンネルを開設し、動画配信者としての活動を始めていく
音楽は瞬く間に評価され、登録者数も目標を大きく超えていくのである
基本的に悪人が登場しない映画で、SNS上の誹謗中傷もそこまでではなかったりする
病気で同情を買おうとしていると書き込まれたりする程度で、窓の外の景色とか、部屋の中のアイテムから特定班が動き出すものの、実害が出て襲われるというようなことにもならない
リメイク元を知っていると、ほぼ同じ流れで物語が動いていき、ガジェットが現代に置き換わっているように見える
UVカットのカーテンとか、1回しか登場しないスーツもスリムなものになっていた
このあたりに20年の時を感じるのだが、ラストは定番のFM放送で完成した曲が流れるというところは過去を彷彿させる演出になっていたと思う
今でもラジオやFM放送というものはあるのだが、てっきりサブスクチャートを駆け上がってみんなが聴くとか、それがメディアに取り上げられるというような展開になるのかなと勘繰っていた
なので、あくまでもリメイク元の骨子を逸脱しないように作られていたのだろう
あえて比較されるとしたら、演じているのが女優か歌手かというところだが、主演を務めたチョン・ジソは音楽ユニット「GAYA-G」のメンバーとして活動していた
映画はどこまで生歌唱かはわからないが、公園ライブが生歌唱で、ラストはレコーディングの完成曲というテイストなので、すべてが生歌唱でないとダメということはないのかな、と思った
いずれにせよ、余命わずかになった時に「何を残すか」というのがテーマとなっていて、ミソルは恩人たちに色んなものを贈っている
ミンジョンも彼女の生きた証を残したいと考えていて、彼女のためのレコーディングを執り仕切っている
ラストでは弦楽器などが楽曲を演出する役割を担っていたのだが、そこは彼女のファンたちが集ったという改変にして、ラジオをきっかけとして集まるという流れでもよかったと思う
一方的にミソルが何かを残したというよりは、みんなで作り上げたというところに意味があると思うので、レコーディングにサプライズとして4人以外の演奏者が集結して一発録りをするとか、実はそれが「ライブとして公開される」というのでもエモかったと思う
あまりにも作り込みすぎると覚めてしまう部分があるので匙加減が必要だと思うが、楽曲に色んな楽器が重なる意味合いは強いので、最終的に壮大なものになるというコンセプトとして絡めれば、映画的な何かを残せたのではないだろうか