劇場公開日 2025年11月14日

「性別イコール役割だった時代の話」ブルーボーイ事件 すーちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 性別イコール役割だった時代の話

2025年11月19日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

性的マイノリティの方々の中でも、性自認に違和感を持つ方(トランジェンダー)の苦悩について理解が深まりました。
ゲイ、と一言で言っても性自認は男性のまま男性が恋愛対象なのと、性自認が女性なのでは、後者のほうが人生ハードモードかもしれない。

主人公のサチが田舎生まれで、子供の頃から色白で弱々しく「オトコオンナ」と虐められて育ったという設定。
従軍経験のある検事がトランスジェンダーの方達を「奴らの道理が通るなら、戦死していった同胞たちが浮かばれない」と嫌悪する設定。
当時、男性というものはとかく強くあり、国を守るべきもの(そうでなければ存在価値なし)という価値観がいかに強固であったかというのを思い出しました。
女性は少なくとも少女のうちは身体も心もふにゃふにゃでも(笑)赦されますから、少年期から「男にならなければならない」プレッシャーを受ける男性はただでさえ大変。
性自認が女性であるなら尚更辛いよなあと。

サチが性適合手術を受けて女性として生きようとしたが、そこでも居場所がなかったと語るのを聞いて胸が苦しくなりました。
女は女で、成人すると男性とは別の社会的な役割が求められますからね。
お化粧して着飾って、男と恋愛してというのは女性の一面にすぎないわけで、そこのみを追求しているように見えるおかまバーのトランスジェンダーたちは本来の女性とは別物のファンタジーの存在。
現実の女は思春期以降の女性同士の同調圧力、生理、妊娠出産、母となった後は夫と子に尽くすなどのややこしい現実がある。

どちらの世界にも行けなかったサチは、役割を求められる前段階の少女のままでいたかったのかなと思いました。
その意味では、21世紀の日本はそういった未成熟な生き方でもある程度容認され、個人の幸福は追求しやすくなってきているように思います。

サチ役の方、演技経験のないトランスジェンダーの方だったとは驚きました。
最初ちょっとぎこちなくて「コントみたい?」と一瞬思ってしまったのですが、後半どんどん役柄にシンクロしていって裁判のシーンの涙は本物でした。
弁護士役の錦戸亮が意外に良かったです。

すーちゃん
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