「従来のLGBT映画から頭一つ抜け出ている」ブルーボーイ事件 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
従来のLGBT映画から頭一つ抜け出ている
1964年の東京五輪景気に日本が沸いていた頃、国の品位を保とうと警察は売春の摘発を進めていました。そうした対象の中に、性適合手術(当時の呼び名は性転換手術)を受けたブルーボーイと呼ばれる女性(出生時に定められた性別は男だが手術で女性の外観となった人々)も居ました。ところが、その様な人々は戸籍上は男性なので「売春防止法」を適用する事が出来ません。そこで、警察は、手術を行った医師を違法の医療行為者として逮捕したのでした。しかし、自分の肉体と精神の乖離に悩むトランスジェンダー女性(出生時には男と定められたが、自分自身は女性と自認している人)にとっては性適合手術を受ける事は自分の意識に体を近づけるせめてもの手段であったので、それを違法とされると、その乖離を一生抱えて行かねばならなくなります。
そこで、医師の弁護士はそうしたブルーボーイに、手術が自分には必要な医療行為であったと証言して貰おうとします。しかし、公の場に顔を晒して自身の性自認を語る事は世間からの好奇の眼と差別を覚悟しなくてはなりません。本作は、当時本当にあった本裁判に材を取った物語です。出演者には現実のトランスジェンダーの方々も多く出演しています。
ただ、当事者であるとはいえ未経験の出演者の方々の演技はやはりぎこちないものでした。しかし、終盤に向けて紡がれる言葉の数々には切れば血が噴き出す熱が籠っていて圧倒されっ放しでした。そこには借り物の言葉は一つもありません。これまでLGBTに関する映画を何本も観て来た僕でも「そうだったのか」と胸を衝かれる言葉が幾つもありました。
従来のLGBT映画から頭一つ抜け出ています。日本の伝統的家族制なる幻に縋りつきたい政治家や総理大臣などは是非観るべき作品です。更に、トランスジェンダーとゲイの違いが分かっていない人々も。
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