「60年前のこの事件をもう一度取り上げなくてはならないことが恐ろしい」ブルーボーイ事件 ふくすけさんの映画レビュー(感想・評価)
60年前のこの事件をもう一度取り上げなくてはならないことが恐ろしい
1965年が舞台だが、
1964年の東京オリンピックの翌年
数年後に迎える(1970)大阪万国博覧会
汚いものは排除すべし、という空気の中で娼婦が過剰に排除される。
そこで取り切れなかった汚れがブルーボーイというわけだ。
劇中では男娼と語られる。
男性は性的搾取の対象とされず、男が身体を売ることを取り締まることができなかった
そこで優生保護法!
なんというこじつけ!
検察、国家の意地が恐ろしい。
国家観のために、逸脱を許せない人たち。
「あいつらの軽率、軽薄さが許せないんだ。」
「戦友たちに顔向け出来ない。」
「子を成す事ができる健全な身体でありながら、それを放棄するというのは無責任ではありませんか?」
彼女らは誰に迷惑をかけているわけではない。
にも関わらず、存在の不快さだけを理由に、嗤われ、優生保護法違反という難癖をつけてでも、排除される。
その憎しみの深さが恐ろしい。
軽く避けられるのではない。
憎しみをもって滅ぼしにかかるのだ。
そして一人殺されてしまう。
弁護士が自然に「彼女たち」と言ってくれているのが救いだった。
メイ(中村中)の、セリフが辛い。
「オカマだって死ねば焼くのよ。」
「バカかブスがどっちかに決めなさいよ。」
「こんなに不細工じゃ三途の川も、渡れないじゃないの。」
「そりゃ腹は立つわよ。でも何を言われても…」
強くなければ生きていけないのは、それはそれで何かが間違っている気がする。
それにしても中村中さん、最高!
60年前の話だが、今、何か大きく変わったのだろうか。
また60年前に戻りつつあるようにさえ思える。
今、この時代の空気感の中でまた、この問題が取り上げられなくてはならなかった不幸を思うと苦しい。
弁護士に善意がありながら、彼女たちを苦しめる前半が苦しい。
「今。私は幸せです。
でも皆さんが思っていらっしゃる幸せではありません。」
この溝が埋まる時代は来るのだろうか。
彼女たちの苦しみの複雑さが丁寧に描かれていて素晴らしい。
トランスジェンダーの人たちは身体の変更の問題があり、他のLGBの人たち以上に政治的に振る舞ってきた。
いち早く市議会議員に代表者を送ったのも彼等、彼女等であった。
むしろ一番政治的に成功していたはずの人たちであった。
それが今一番攻撃されている。
根深い。
タバコにべったり付く口紅
アーケードの商店街
ブラウン管のテレビ
巨大な、ステレオセット
昭和の空気観を出す演出は大変だったと思います。
ありがとうございました。
今晩は。コメント有難うございます。
今作は、主人公のサチを演じた、ご自身の性別適合手術を受けるまでを記録したドキュメンタリー映画「女になる」の中川未悠さんの証言台での台詞が強烈な現代社会への警句になっていると思いました。
今年の参議院選挙で漸く落選してくれた(当たり前)、同性カップルに対し酷い差別発言をしつつ、のうのうと国会議員で居続けた女性議員が居ましたが、あの人は別格として同性愛者が生きにくい日本へのアイロニックな映画だとも思いましたね。では。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。


