「60年前の法廷が問いかける性自認と尊厳」ブルーボーイ事件 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
60年前の法廷が問いかける性自認と尊厳
■ 作品情報
高度経済成長期の日本で実際に起きた「ブルーボーイ事件」を題材にした社会派ドラマ。監督は飯塚花笑。主要キャストは中川未悠、前原滉、中村中、イズミ・セクシー、渋川清彦、山中崇、安井順平、錦戸亮。脚本は飯塚花笑、三浦毎生、加藤結子。
■ ストーリー
1965年の東京オリンピック景気に沸く中、警察が街の浄化を名目に「ブルーボーイ」と呼ばれた性別適合手術を受けた人々への取り締まりを強化する。手術を行った医師の赤城は優生保護法違反で逮捕・起訴され、その裁判が始まる。赤城の弁護を担当する弁護士の狩野は、赤城から手術を受けたトランスジェンダー女性のサチのもとを訪れ、裁判で証言するよう依頼する。喫茶店でウェイトレスとして働き、恋人の若村からプロポーズを受け、静かで幸せな日々を送っていたサチは、自身の過去を明かし、社会の偏見と戦うか、現在の平穏な幸せを守り通すかという大きな葛藤に直面する。当時の社会におけるジェンダーマイノリティの尊厳と、個人の幸せのあり方が法廷で問われることになる。
■ 感想
60年も前にこのような画期的な裁判があったことを全く知らず、大変驚きました。性転換手術や性自認の問題は、当時の社会通念や常識から見れば、大きく逸脱していると見なされていたことでしょう。そのような時代に、その当事者として注目されることになれば、自身の日常生活を脅かすだけでなく、周囲の人々にまで多大な影響を及ぼしてしまいます。そんなリスクを冒して証言台に立つことの勇気と覚悟は、計り知れないものだったと想像します。
その大きな葛藤を抱えながらも、証言台に立ち、自らの思いを吐露したサチの姿には、涙を禁じ得ません。彼女たちに生きづらさを与えているのは、彼女たち自身の内から生じる悩みや苦しみではなく、無理解な社会にあるのだと改めて痛感させられます。これは単に性自認の問題に留まらず、人としての尊厳やアイデンティティを深く問う普遍的なテーマだと感じます。
性自認の問題は、本作の舞台である1960年代に比べれば、広く認知されるようになったとは言え、いまだ社会で一般的に受け入れられているとは言い難い現状があります。本作を機に、いま一度、この問題について深く考えてみるべきだと強く思います。多くの人に見ていただき、自身の認識や言動を見つめ直すとともに、身近な人とこの話題について語り合うきっかけとなることを願います。
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