劇場公開日 2025年8月22日

「身体を張った演技で魅せるアナ・デ・アルマス」バレリーナ The World of John Wick neonrgさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 身体を張った演技で魅せるアナ・デ・アルマス

2025年8月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

『ジョン・ウィック』シリーズのスピンオフ作品として、アナ・デ・アルマス主演の本作を鑑賞しました。世界観は完全にジョン・ウィックを踏襲しており、掟に支配された殺し屋社会、コンチネンタルホテルの中立地帯、掟を破れば懸賞金をかけられるというおなじみの構造がそのまま展開されます。言わば「横に広がった姉妹作」という位置づけで、シリーズの味を崩さずにセルフコピーとして成立させている印象でした。

物語は、幼い頃に父を教団に奪われたヒロインが、自らの失われたものを取り戻すかのように他者を救済するという展開です。ジョン・ウィックが「虚無と向き合わされ続ける男の物語」であったのに対し、彼女の物語は「母性的な救済」へと開かれている点が特徴的でした。しかしそれは押しつけがましいリベラル的メッセージではなく、世界観の中で自然に機能しているので違和感がありません。

主演のアナ・デ・アルマスは、とにかく存在感が圧倒的でした。美貌だけでなく、身体性そのものが演技となっていて、どこまでが本人でどこからスタントなのか判別がつかないほど体を張ったアクションを見せています。『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』での印象がそのまま繋がったかのようで、本作が彼女の代表作となることは間違いないと思います。キアヌ・リーブスも登場しますが、友情出演というより、往年の東映任侠映画のように「助っ人」として彼女を支える役回りで、シリーズの顔でありながら彼女を引き立てる立場に徹していました。

そして何より本作の最大の魅力はアクションです。背景の街並みにCG感の安っぽさが残ったのは残念でしたが、戦闘シーンそのものは超一流でした。特に火炎放射器を使った場面は実際に炎と防護服を用いた古典的手法によるもので、CGに頼らないリアルな迫力が画面から伝わってきます。まさに「生身のアクション映画」としての誇りがここにあります。

結末は掟を破った主人公に懸賞金がかけられるというジョン・ウィック的なパターンで幕を閉じ、続編への布石を残しました。シリーズの新たな柱として展開していく可能性を感じさせます。
「焼き増し」ではあるものの、見応えのあるアクションとアナ・デ・アルマスの身体性によって十分に成立している良作でした。

鑑賞方法: 映画館

評価: 72点

neonrg