「ディザスタームービーとしてそれなりに楽しんだ」カウントダウン kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
ディザスタームービーとしてそれなりに楽しんだ
放射線を扱ったディザスタームービーってなかなか珍しい。東日本大震災の福島原発を扱った「Fukushima50」もディザスタームービーとは言えないものだし。そりゃそうだ。放射線は目には見えないものだから緊迫感を伝えるものがガイガーカウンターだけになってしまう。ディザスタームービーとしてはとても地味になる。
本作のうまいところは、放射線だけではなく火災と合わせた事故として描いているところ。これで目に見えないという放射線の特性による地味さをカバーできる。さらにセシウムと水が合わさると爆発するという設定(フィクションだと思うが)によって緊迫感を増すことに成功していた。ただ、大惨事に発展する条件が火災現場の高濃度セシウムに雨が降り注ぐことなのがややインパクトの弱さを感じてしまう。それでも近くを飛んでいた鳥たちが放射線を浴びてボトボトと落ちていくシーンはなかなかいい演出だった。あれは地味に怖い。
政府の中枢にいる人間たちの汚い部分を見せるのもなかなかうまかった。事故の被害が相当やばいことになるとわかった後、高官もしくは政治家たちが自分たちの家族にだけ避難の指示を伝えるシーンはある意味人間らしかった。ただ、香港映画や中国映画なので、最終的には政府の人間はちゃんとしているよ!という流れになってしまう。もう、これは仕方ないのだろう。
「アルマゲドン」のような、自己犠牲のヒロイズムが相変わらず描かれていたのもほんの少しげんなりした。しかも悠長に(正しい表現ではないかもしれないが)口笛を吹いたり歌ったりしながら死んでいく。最後まで助かる道を探そうとあがいてほしかった。「TOKYO MER」(劇場版は観ていないけど)なら絶対にこんな展開じゃないんだろうと思う(あの展開がいいとは言えないけれど)。こんな自己犠牲もまた香港映画っぽいと言える。
ただ、嫌だったわけでもつまらなかったわけでもない。文句は言いながら、ディザスタームービーとしてそれなりに楽しんでいた自分がいる。なんなら最後は少し感動したくらい。もう少し多くの人に観てもらってもいい映画だ。
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