「世界を股にかけ仕事してるスパイの皆さんの世間の狭さよ(笑) 94分でサクッと観れる小粋でスマートなスパイ•スリラーもといコメディ? ひょっとして「割れ鍋に綴じ蓋」スパイ夫婦のラブ•ストーリー?」ブラックバッグ Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)
世界を股にかけ仕事してるスパイの皆さんの世間の狭さよ(笑) 94分でサクッと観れる小粋でスマートなスパイ•スリラーもといコメディ? ひょっとして「割れ鍋に綴じ蓋」スパイ夫婦のラブ•ストーリー?
主人公はイギリスの国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)のエリート諜報員のジョージ(マイケル•ファスペンダーがお見事と言えるほどの好演をしています)。彼は何千万人の生命に関わるような不正プログラム「セヴェルス」を組織内から盗み出した裏切り者をあぶり出す極秘任務につきます。容疑者は5人。その中には彼の妻キャスリン(負けず劣らずお見事なケイト•ブランシェット)も含まれています。
ということで、スパイものなのですが、これがなんとまあ、ちまちまとした会話劇。登場人物たちが皆、けっこう内向的で精神的な問題も抱え、なんだかこういった諜報機関以外の世界では成功が覚束ないタイプのように思われます。特に主人公のジョージは冷静沈着でスパイとしては有能だと思われますが、お前、奥さんのキャスリン以外に友だちいないだろ、とツッコミたくなるような孤独を抱え込んでるタイプです。本篇を観た感じだと彼の趣味は釣りと料理。なるほどね。
で、キャスリンのほうもまあジョージといっしょにいれば、「割れ鍋に綴じ蓋」みたいな感じ。ふたりは「職場結婚」なんでしょうね。ふたりともスパイが天職で、相当アタマの出来もいいんでしょうけど、他の世界では非常に難しいタイプだと思います。ふたりの間には子供はいません。持たない選択をしたのだと思われます。
タイトルにある「ブラックバッグ」はスパイたちがそれぞれ持っている黒いブリーフケースのことでしょう。そこから転じて、ずっと自分のカバンの中の自分だけが見えるファイルに閉じ込めておく極秘任務のことを指すようになったと思われます。本篇を観る限りは、このNCSCという組織はなんだか個人商店の集まりみたいな感じで、組織にとって重要な報告、連絡、相談は組織図上の関係に沿ってではなく、個人商店間の個人的な関係によって行われてるのではないかと思えてきました。
さて、裏切り者をあぶり出すにあたって、ジョージは趣味の料理をフル活用して、自分プラス容疑者5人の夕食会を開きます。本篇にはこの夕食会が都合2回出てきます。最初の会でジョージは薬を一服盛ってメンバーの口を滑らかにさせます。5人はキャスリンを除くと、男性、女性、各2人ですが、一対ずつ男女の関係になっていて、なんだか世間が狭いな、といった感じです。仕事の性格上、守秘しなければならない内容を取り扱っていますから、どうしても内向きになってしまうんでしょうね。社交的に振る舞って広く外に相手を求めたら、ハニートラップに引っかかっちゃったでは目もあてられませんから。
結局、スパイ衛星の画像を使っての追跡やら、ウソ発見器を使っての訊問やら、ジョージがもう一方の趣味の釣りにある人物を連れ出してのハラの内の探り合いやら、2度目の食事会やらを経て、実行犯はあぶり出されて処置されますが、一連の出来事の根本原因は幹部同士の権力闘争だったということがわかってきます。すなわち、ジョージに裏切り者のあぶり出しを命じたジョージの上司(謎の死を遂げます)とキャスリンの上司アーサー(かつてのジェームズ•ボンドのピアース•ブロスナンが演じてます。イケオジのラスボスですな)の間のヘゲモニー争いです。アーサーは何かと目障りな部下のキャスリンとその夫でライバルの部下でもあるジョージの失脚までも狙った一石で何鳥も落とせる作戦を展開していたと思われますが、活き造りを食べている間に不発に終わったようです。
ということで、けっこうちまちまとしたお話なんですけど、かなり面白かったです。あの夫婦、ラスボスの弱みは握ったし、ほとぼりが冷めた頃には自由にできるかもしれないカネのありかを知ってるし、NCSCきってのパワー•カップルになれたのではないでしょうか。
Freddieさん、コメントありがとうございます!映画と遊ぶ、まさしくそれが一番楽しい、そして映画にチャチャ入れながら見る、それ楽しい~!脳内では結構やっていたのに気づいてませんでした!
そっかー!チマチマした人達のお話で、でも頭はみんないいけど職業柄、そんなに友達持てないし、結婚相手も同じ職業の中から探さないと!というところに面白さを感じなくてはいけなかったんですね!わかりました。機内でチマチマ見たのでなんだかこの映画、よくわかんねー!でしたが、映画館で見るといいかもしれませんね!ファスベンダーだし!仕切り直ししてみます!ありがとうございます!

