「家庭内『ミッション:インポッシブル』の楽しみ方」ブラックバッグ 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
家庭内『ミッション:インポッシブル』の楽しみ方
イギリスの国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)に勤務する諜報員、ジョージが、上司から世界を揺るがす不正プログラムを盗み出した組織内部の裏切り者、4人を夕食に招く。もう1人の容疑者はあろうことか同じく諜報員である妻のキャスリンだ。
その後、物語の舞台は必然的に家の外へ飛び出すが、主戦場はダイニングやベッドルーム。そこで展開する夫婦間の探り合いが見どころだ。つまりこれは、主に家庭内で繰り広げられる『ミッション:インポッシブル』。ロケーション・ムービーとしての楽しさや、そこで炸裂する危険なスタントシーンはないし、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが似たようような設定で共演した『Mr.&Ms.スミス』('05年)ほどの派手さはないが、それでもスパイ映画は作れるという、監督、スティーブン・ソダーバーグの意気込みとプライドがひしひしと伝わってくる1作だ。
このような世界観をスパイ映画マニアも待っていたのか、映画は世界でそこそこヒット。ジャンル映画としての新しい在り方を証明してみせた。惜しむらくは、キャスティングが若干鮮度に欠ける点。しかしこれも、好みの問題としてスルーできるレベルだと思う。
