「結婚には覚悟が必要だけど、対外的に見せることでそれを深めて行くのかもしれません」佐藤さんと佐藤さん Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
結婚には覚悟が必要だけど、対外的に見せることでそれを深めて行くのかもしれません
2525.12.2 TOHOシネマズ二条
2025年の日本映画(114分、G)
あるカップルの15年を振り返るヒューマンドラマ
監督は天野千尋
脚本は熊谷まどか&天野千尋
物語の舞台は、二人が37歳になった頃の都内某所
弁護士としてキャリアを積んできたサチ(岸井ゆきの)は、離婚を考えて自説を主張する依頼人・東海林明(中島歩)の話に耳を傾けていた
サチはかつて、同じ大学の珈琲研究会に所属していたタモツ(宮沢氷魚)という夫がいたが、3年前に夫婦の仲を解消していた
二人には3歳になる息子・フクがいたものの、今ではサイクルを決めて育児にあたり、お互いの生活には干渉しないようにしていた
二人は、22歳の時に自転車置き場で出会い、そのエピソードをきっかけに急速に仲を深め、気づいたら同棲状態になっていた
タモツは弁護士になることを夢見ていて、日々努力していたが、なかなか試験に合格することはできなかった
そんな二人に転機が訪れる
それはお互いが30歳になった時に、サチがタモツと同じように司法試験の勉強を始めたことだった
そして、その結果はすぐに二人の中にあるものを残していく
サチは司法試験に一発合格し、あと2年しか猶予のないタモツをあっさりと追い越してしまったのである
映画は、離婚後の37歳を起点にして、講釈を垂れる依頼人・東海林の言葉から「自分の過去を回想するサチ」という目線で描かれていく
自分たちに足りないものは何だったのかを振り返るテイストになっていて、サチが担当する依頼人が二人とも「男性」というところに意図がある
老人・菅井(ベンガル)の依頼は一方的に離婚を突きつけてきた妻との和解だったが、結局は短い手紙のやり取りで終わっていた
菅井が諦めたのは妻の手紙だけではなく、サチの態度も少なからずあった
この時の彼女はどちらかと言えば妻の味方に見え、依頼人の要望に応えようとはしていない
それがラストでは「東海林の意図を汲み取る」という思考に変わっていて、彼女なりに何が足りなかったのを理解したのだろう
物語は、プライドがズタズタで感情的で子どもっぽいタモツにイライラさせられるのだが、そもそも彼とサチは合わなかったと思う
意気投合したような流れで同棲へと向かっていったが、単に顔が好みとか、話が合ったとかなど、浅はかな勢いだったのだろう
初見でコーヒー豆の取り違えがあって、それがきっかけとなっているのだが、このシーンを見ても性格が合わないのではと思ってしまった
細かなところに気がつくのがタモツの性格ではあるものの、そのことが常に頭にあるというタイプで、思考や状況が自分本位であることを示している
対するサチは細かなところに気が回らないように見えて、言葉尻にそれが露見するタイプだった
これをタモツが見逃すわけもなく、さらに状況がそれを悪化させていく
ある意味、必然的な別れであり、サチに何かができたとも思わない
敢えて言うなら、弁護士として成長するための過程にタモツがいたと言うだけの話であり、彼女自身が纏っている空気がずっとタモツを苦しめてきたことに気づくために時間だったとも言えるのだろう
いずれにせよ、かなりリアルテイストな物語となっていて、岸井ゆきのの演技も凄いが、それに呼応する宮沢氷魚も凄いと思う
この二人の演技力で保っている作品となっていて、演出などを含めて心が削がれるタイプの作品だったと思う
二人が同姓と言うところもポイントになっていて、サチの親友・篠田(藤原さくら)からキツい一言が待っていた
姓を変えることだけでなく、結婚式もせずに、「離婚しても佐藤のまま」と言うのは区切りと覚悟を感じる上では必要なことだろう
選択式夫婦別姓に賛否はないものの、結婚と言う制度に対して敬意を持って、覚悟を持てるのならば良いと思う
ある意味、離婚した時にスムーズだよねと言うハードルの低さというものが根底にあるのなら、どんな相手であれ、いずれは破綻するのではないか、と感じた
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