「『トップガンマーヴェリックのスタッフが贈る…』という宣伝文句」映画「F1(R) エフワン」 ブロディー署長さんの映画レビュー(感想・評価)
『トップガンマーヴェリックのスタッフが贈る…』という宣伝文句
レースシーンの臨場感とブラピのカッコ良さだけで2時間半持たせてしまう、とても出来の悪い映画だった。
脚本がしっかりできていないので、物語の構成とテンポが悪く、クライマックスに向かう展開を主人公ソニーのセリフだけで組み立ててしまっている。
物語の肝心な部分がきちんと描けていない。
①生意気な若者である相棒ドライバーのジョシュアが主人公ソニーの影響を受けて成長するという姿が描けていない。ジョシュアが名声や金だけが目当てのマネージャーの呪縛を振り切って成長しなければ物語として意味をなさないのに、急に、いつの間にか成長して大人になっていることをセリフだけで見せるお粗末な演出。
②ソニーというチームのみんながバカにする老兵がいかに凄いレーサーであり、どのようにして低迷するチームに変革をもたらすかが作品の見どころのはずなのに、その正体は、レースでわざと他車と接触してセーフティーカーを出し順位を上げていくという主人公として考え難いような姑息な手段。これを作品内では「ベテランによる頭脳的戦術」として描いている。しかもその作戦を何度も行う。これでは感動できない。
③チームのテクニカルディレクターのケイトがさしたる理由も描かれずソニーと一夜を共にする。ケイトは自分の仕事を「女性だということでバカにした奴らを見返してやる」という気概のある人物として描いているはずなのに、ただブラピを立てるロマンスの道具立てとして終わる。この演出は女性を主人公を引き立てるためだけの駒として扱う人権意識に欠けた不必要で不自然なものだった。
④団結したレースチームの快進撃に待ち受ける最大の敵が小物の投資家。弱々しくて存在感が無く、倒し甲斐が無いのでクライマックスとして盛り上がらない。
『トップガンマーヴェリックのスタッフが贈る…』という宣伝文句に完全に騙されてしまった。ちなみにトップガンは上記の①〜④の課題を全て無理なくクリヤーしている素晴らしい出来のエンタメ映画だった。
レース映画の名作『グランプリ』『栄光のル・マン』『フォードvsフェラーリ』の足元にも及ばない不出来な映画だった。
例えるなら黒澤明の『用心棒』を見ている人が織田裕二の『用心棒』を見たような感覚。
それにしても驚くのはこの作品を高く評価している人が多いこと。
本当にこの映画を劇場で見てそう思ったのか?
感想を書いている人は全員、最近映画を好きになった小中学生なのか?
以上、
ブラピのタレント力だけで映画を持たせてしまうという文句無しの今年度ワースト映画。
①成長が描けていない。
②主人公として考え難いような姑息な手段。
③さしたる理由も描かれず一夜を共にする。
④最大の敵が小物の投資家。
全てその通りです…が、別にそれでよかったのでは無いでしょうか?
この作品に求められているのは完璧なストーリーでは無く、あまり不快にならないストーリーであって(その点確かに③は意味不明だったが)、この作品の本懐はリアルなグランプリに潜り込んで撮影した映像やそれとCGの融合だったのではないでしょうか。
私もそうですが、高評価している人間の殆どは「普段映画を見ないが、F1がテーマということで見に来た」でしょうから、映画通の方々とは視点が違います。我々としては、フェルスタッペンがdirty!と言えばそれだけで「おお」となりますし、アロンソが肩を叩けば、サインツが横にいれば、それで一々興奮します。求めていたのはそれなのです。(だからこそ、省略文字がおかしかったり最終戦がルール上不可能な行動だったりするのは気になりましたが。)
大まかに言えば、この違いこそがあなたの感想と世間の感想のギャップなのでは無いかと推察します。
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