「制作から20年経過している事実が、映画が描き出す問題の複雑さを物語っている」ミステリアス・スキン Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
制作から20年経過している事実が、映画が描き出す問題の複雑さを物語っている
2025.5.1 字幕 アップリンク京都
2005年オランダ公開、2025年アメリカ公開の映画(99分、R15+)
原作はスコット・ヘイムの小説『Mysterious Skin(邦題:謎めいた肌)』
8歳の頃に起きた事件によって強烈なトラウマを抱えた二人の青年を描いた青春映画
監督&脚本はグレッグ・アラキ
物語の舞台は、アメリカ・カンザス州にある田舎町
8歳の少年ブライアン(George Webster)はある雨の日の5時間の記憶がすっぽり抜け落ちていた
気がつくと姉のデボラ(Eacheal Nastassija Kraft) から「鼻血が出ている」と言われ、母(Lisa Long)から過剰に心配されてしまう
父(Chris Mulkey)は無関心なようで、その態度に母親は怒っていた
一方その頃、ブライアンと同じリトルリーグに所属していたニール(Chase Ellison)は、コーチ(ビル・セイジ)とよからぬ関係を深めていた
以降、ニールは強迫観念に囚われるようになっていて、仲良くなった少女ウェンディ(Riley McGuire)は彼の狂気じみた行動を心配するようになっていった
それから10年後の1991年、ニール(ジョセフ・ゴードン=レビット)は男娼として生計を立てるようになり、町では「ある場所」がキーワードになっていて、そこにニールを買いたい客が訪れるようになっていた
ウェンディ(ミシェル・トラクテンバーグ)は「いつかヤバい奴に酷いことをされる」と感じていたが、ニールは聞く耳を持たなかった
一方のブライアン(ブラディ・コーベット)は、「空白の5時間」に固執するようになり、悪夢に苛まれていく
彼は地球外生命体のテレビ番組に傾倒し、自分は子どもの頃にUFOに拐われたのではないかと思い始める
そして、TV番組に出演していたアヴァリン(メアリー・リン・ランスカブ)に手紙を出すようになっていた
映画は、ブライアンが空白の5時間を探すのと並行し、ニールが後戻りのできない生活へと入っていく様子が描かれていく
ニールはコーチに特別扱いされたことに固執していて、同じような愛を探しているがどこにもなかった
ブライアンは空白を埋める何かを探しているうちに、あの時に一緒にいた少年が何かを知っていることに辿り着く
そして、古い写真からニールという少年が同じリトルリーグに所属していることがわかった
だが、家を見つけた時には、ニールはすでにニューヨークに行っており、そこに居合わせたニールの友人エリック(ジェフリー・リコン)と親密になって、彼が帰省する日を待つことになった
ニールはニューヨークでウェンディを頼って生きてきた
サンドイッチ店で働く傍で売春行為を繰り返していて、ようやくクリスマスイブに実家に戻るチケットが手配される運びとなったのである
映画は、8歳の時の出来事が二人を変えたのだが、その行為によって本質が芽生えた者と、行為自体に対するトラウマが生まれてしまった者が生まれたことを描いていく
ニールにとってはコーチは絶対の存在であり、彼自身も行為自体を拒絶はしていない
だが、彼の意思でそれを行ったのかは曖昧な部分があり、立場を利用した虐待以下には思えない
彼自身は本当にゲイだったのかもわからず、コーチによって無理やりこじ開けられたもののようにも思えた
また、ブライアン自身は10年以上も空白に囚われていて、その多くの人生を無駄にしてきたことがわかる
コーチの不在は二人にとって影を落とすことになるのだが、彼らの両親がそのことに気づいていない、というところが残酷であるようにも思えた
いずれにせよ、かなりショッキングな内容で、直接描写はないものの直視に耐えないシーンは多かった
演じた子役のその後も心配で、意味もわからず演技していたのかなと思った
制作されたのは2005年だが、アメリカと日本では2025年まで劇場公開がなされていない
その年月が意味するものはたくさんあると思うが、まずは演じた二人の子役のケアが必要だったのかな、と感じた
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