逆火のレビュー・感想・評価
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北村有起哉がもたらす葛藤のリアリティに引き込まれる
映画の中で「映画作り」の過程を描くというメタ的な構造を持ちながら、悪夢とも呼ぶべき製作の泥沼に陥っていくチームの姿を描く。火種となるのは、映画の原作を著した若き女性の半生だ。その内容の信憑性に疑問を抱いた北村有起哉演じる助監督がジレンマに立たされつつも自分の目で真偽を見極めようとする。彼は作品をめぐる虚実に翻弄され、映画人としての善悪にも翻弄される、いわばあらゆる境界線に立つ人だ。真面目で、仕事ができ、正義感が強い。映画に対する思いも人一倍。しかし彼が夢を追い続けることで家庭は崩壊寸前。その上、仮に彼が製作中止を主張したなら、製作費をドブに捨てるだけでなく、全スタッフの雇用を奪うことになる。この運命の分かれ道で彼が何を考え、何を思うのかをじっくりと炙り出した筆致が魅せるし、何よりも主演が北村だからこそのリアリティに見入ってしまう。硬派でストイックな触感と共に、ヒリヒリした余韻が残る作品だ。
娘の裏アカを見ていた母親は、旦那の裏アカも見てたんかな。
あるいは娘も父親の裏アカみてたんかな、みたいな想像を走らせています。なんか家庭の空々しさ、崩壊の避けきれなさの強さwがゴツい。
前日アオショーという映画で留年学生に一学期分単位くれる校長がいましたが、この娘が父親のリサーチの仕事について回っていたら良かったかなと。家庭学校仕事の三権分立?がもう限界なのかな〜とか。飲み過ぎですね寝ます。
薄っぺらい正義感
映画監督になることを夢見ながら助監督として働いていた野島の次の仕事は、貧しい家庭で育ち父の介護をしながら、その後成功したARISAの自伝小説の映画化だった。しかしARISAの周辺で話を聞くうちに、小説に書かれた美談とは程遠い、疑惑が浮かび上がった。真実を追求しようとする野島だったが、名声を気にする監督や大ごとにしたくないプロデューサーらの思惑で撮影続行を望む人々から圧力をかけられた。やがて野島の娘の素行に問題が起き、彼の日常は・・・さてどうなる、という話。
野島のやってることに全く共感出来なかった。
あそこまで準備して映画のクランクイン直前にどうしたかったのか、観てもらえない作品を作りたかったのか、事実に基づくフィクションで良いんじゃない?って思って観てた。
薄っぺらな正義感、って誰か言ってたけど、まさにその通り。あんなことしてるから娘が○んでしまうんだろう。
あの娘も、なぜ1年も経って卒業間際にあんなことしたのだろう?するなら携帯壊された直後じゃないかな?タイミングがなぜあの時だったんだ?
北村有起哉がうざい助監督・野島役を好演してたのと、ARISA役の円井わんの正直な対応は良かった。
ドキドキしながら観れたし疑問は持ったが面白かった。
有起哉さんとわんさんのふれあいが救いだった
家族を顧みず、映画監督になることを夢見ながら助監督として奔走する主人公・野島を北村有起哉さんが演じた。
貧しい家庭で育ちヤングケアラーとなりながらも起業し成功したARISAの自伝小説を映画化する企画。しかし小説に書かれた美談が嘘だと知った野島。
真実をありのまま撮るべきだという野島に大きな違和感を覚えた。観ているのが辛くなった。
そもそも映画は作りもの。嘘をもって真実を語るもの。何を伝えたいかがすべてだ。
映画監督のあるべき姿を示したのはお笑いコンビ「かもめんたる」の岩崎う大さん。名演だった。その落ち着き悟った佇まいが静かなインパクトを残した。
ARISAを演じた円井わんさんの出番が少なかったのがちょっぴり残念。ARISAが食い足りなかった。
飯が食えなくなるという叫びが心に残る。
「ぎゃっか」と読むらしい。問題提起したら素材に不良があって逆噴射、つくる側が火を浴びちゃったっていうことですね。
ARISAの過去に問題があることぐらい原作が世に出た時点で分かるだろう、最悪でも映画の企画段階で調査しないの?野島にしたところでも折り合いをつけられるタイミングはたくさんあったはずなのにどうしてそこまでこだわるのか?
と、ツッコミどころ満載ながら、クセのある役者の熱演に引きづられてあまり飽きることなく最後まで観てしまいました。
イヤミス(読了後に嫌な気分になるミステリ小説)っていうジャンル?があるが、この映画は「イヤシネ」ってところかな。
理由のわからないエンディングもその印象を強くしている〜どういう話をつけたのか映画関係者はまるく収まっている。主人公の娘だけ割りを食った。何かの罰か?〜
この作品の最大のポイントは、監督と野島の言い争いで、監督がヤングケアラーなど苦しんでいる子どもたちにこの映画を見せて勇気づけたい、というのに対して野島は、その子たちはこんな映画は観ない、映画は観たとしてもアニメかハリウッドのスーパーヒーローものだって言い返すところ。そこはすっかりこの作品にも言えるところで、鬼滅に追いやられて変な時間に観る羽目になったことから深く同意するのでした。
でもこの作品で一番印象に残ったところ。それは映画が中止になりそうで、スタッフたちが口々に訴えるところ。いわく「病院の支払いがある」「奨学金を返さなきゃいけない」「半年間、準備のため収入がなかったのに」。そして野島の娘の叫び「金をくれないからしょうがないだろ」。
文化を担うものの経済的支援ってもっと何とかならないんでしょうかね?外国人の生活保護がどうたら言っているよりも日本文化を継承するという意味では大事な課題だと思うのですが。
末路
自伝小説が映画化される事になったが本の内容が嘘かもしれないという疑惑を持った助監督・野島が追求していった先に辿り着いた真実とは。
主人公の野島は映画監督になるという夢を持っています。私には甲斐性なしにも見えたのですが、家庭を顧みないせいか妻との関係もいびつで娘は反抗心剥き出しです。
ARISAが書いた本の内容が嘘なのか本当なのかで物語を引っ張っていくのですが、むむ!そっちでしたかの流れに。考えられた構成なのだとは思いますがラストの展開は唐突な感じがして少し浮いて見えてしまいました。
そして野島は何故それが起きたのかさえ理解できないですね…きっと。
岩崎う大は芸人として好きなのですが、変態系の役をやらせるとより活きる気がします。
重い。。。
映画自体が「逆火」?
もう少し問題提起があっても良かったかもしれない
今年167本目(合計1,708本目/今月(2025年7月度)16本目)。
ある事件で有名になった女子高生がコンクールか何かで出した小説が賞を取り、そこから有名人になり、その小説をもとにした映画を作ろうという段階になって、何かおかしくない?という展開。
「やや」ミニシアターよりの作品かなという印象はあります。ただ、ディズニーくらすの映画でもなければ、映画内でいう「何がどうであろうがこのまま進めないと間に合わない」という趣旨は当てはまると思います。
総じていえば、主人公(女子高生)と小説を受け取った出版社の間には双方の同意があるので問題にならないところ、その「真実らしきもの」を信頼した第三者をどう保護するかという外観法理的な観点でみました(あるいは、民法95条(錯誤))。ただ、それは形式的なもので、誰かが明らかに悪いわけではありません。
映画は「意外な展開」に向かいますが、この点は見てのお楽しみといったところでしょうか。
評価は以下まで考慮しています。
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(減点0.2/心裡留保と善意の第三者)
・ 心裡留保は、善意の第三者には対抗できません(序盤のところ)。
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地味
バックファイヤー🔥←なるほど
北村有起哉さん主演とあらば観ないわけにいかない!!と思って久々のテアトル新宿さんへ。
鬱展開なのにとっても静かでゆったりしていて(途中寝息すーすー聞こえるほど)爽やかさすら感じられる不思議な映画。
内田英治監督の作品ってこれまで観てきた(数少ない母数の中では)探偵マリコくらいしか刺さったものが無かったけどこれは考えさせられた‼️
考え方の違いはあれど、立場も役割も生活も何もかも違う人たちの集合体である社会の一面を切り取ってみたら『十人十色』という言葉がよく当てはまる。その切り取る一面を映画製作の助監督さん中心に映し出したという、社会の縮図の切り取りと映画製作の裏側がとってもわかりやすく描かれていた良作💜
そしてとにかく北村有起哉さんがいい✨
普通の人を普通に演じることが一番難しいんぢゃないかなーと思うんだけどお見事でした。
そして今も今後も楽しみな若手女優さんふたり(円井わんさんと中心愛ちゃん)も凄くいい!
複雑な苦い現実世界の肯定
現実の苦さをこれでもかと突きつけてくる映画。
その苦さを北村有起哉さんが見事に体現している。
映像の世界の裏方を物語の舞台として、
感動物語に偏向しがちな業界への批判、
合わせてビジネスという観点での難しさ、作り手の苦悩を
さまざまな立場の関係者の群像劇として
複雑、多層的にみせる構成がすばらしい。
冒頭とラストの屋上シーンの対比も見事。
自分に嘘をついても、逞しくしたたかな人間が生き延び、
自分に嘘をつけない正直な人間は、
救いの希少な現実世界に苦しみ、落ちていく。
明快な示唆、シンプルな答えによって
誰かが背中を押してくれることなんてほとんどなく、
それぞれが悩み、苦しんで答えを探していくしかない、
そんな複雑な現実世界を肯定してくれるような映画でした。
真実の行方‼️❓フィクションのリアリティ‼️❓
絶望への行進
セピア色がかった画像。
昭和を感じさせるレトロなオフィスの室内。
やはり昭和を感じさせる半ば朽ちたようなアパートや建物群。
そんな風景を背景にしてある映画製作の光景が描き出されます。
感動的な実話の映画化に向けて最初は希望に溢れていた関係者たち。
けれどクランク・インが近づくにつれて漂いだした微かな不協和音がやがて轟音をたてて関係者を巻き込んでゆく様が、淡々としているだけにかえってその逃れようのない閉塞感と絶望を際立たせて描き出されます。
本作の主人公は映画の原作となった実話の少女を始めとした様々な立場の若い女性たちだと思いました。
レトロな背景と対照的な彼女たちのイマドキ風な生態。
様々な立場と言っても、それは皆が堕ちてゆく地獄にどれだけ近いか遠いかの違いに過ぎないように思われます。
素直に堕ちてゆく少女たちと、彼女たちを取り囲む建前と正論のバランスをとれない大人たち。
現代社会が孕んだ絶望感を斬新な切り口で提示した作品でした。
やりきりないなぁ…
逆火(ぎゃっか)は、ガス火炎を使用中に火炎が火口からガスの供給側へ戻る現象。 機器類を破裂させることがある。
(Wikipedia)
緻密に計算された脚本/演出に裏打ちされた なかなかの傑作だとも思うが……
本篇について論じる前にまずはこの作品のキャッチコピーについて。「この女は、悲劇のヒロインか、犯罪者か?」とあります。ポスター•ビジュアルではこのコピーを縦書き3行にして赤い字で上から下へと配し、船が何隻か浮かぶ海を背景にして、この映画の登場人物のARISA(演: 円井わん)と野島(演: 北村有起哉)が並んでベンチに腰をおろしています。このキャッチコピーの「この女」とは ARISA のことで、公式サイトにあるあらすじを読んでみても、この映画で中心に描かれているのは ARISA のことだと錯覚します。でも ARISA はこの物語の中では、いわば化学の実験における触媒のような存在で、その実験の中心にあって化学反応を起こしているのは、彼女の自伝的小説を映画化した『ラストラブレター』の助監督を務める野島なのです。この映画は徹頭徹尾、この野島の物語です。この『逆火』という映画のプロモーションには「羊頭狗肉」(羊の頭を店先にかかげて犬の肉を売るというヤツですね)感を感じてしまいます。
まあでも映画の中身は犬の肉などではなく、なかかなか上質の肉と言ってもいいと思います。物語は上記の『ラストラブレター』のクランクイン直前からスタートします。映画の原作である ARISA の実話を基にしたと言われる自伝的小説の内容に疑念を抱いた野島は彼女の過去を調べ始めます。小説の中では彼女は体の不自由な父の面倒を彼が事故で亡くなるまでみた健気なヤングケアラーです。でも実態はそんな美談などではなく、父親のDVがあったり、父親にかけられた生命保険があったり、おまけにARISA(有紗)の少女時代の素行が芳しくなかったり、とドロドロしていたことがわかってきます。野島は真実ではない美談を映画にしてよいかと苦悩し、監督(演: 岩崎う大)やプロデューサー(演: 片岡礼子)とも相談しますが…… と、苦悩する職業人として野島。
一方、家庭人としての野島も娘のことで苦悩しています。素行不良の娘はホストに入れあげてカネに不自由している模様。新宿の東横あたりにも出没しているみたいで父親の言うことなどまったく聞かない。野島は仕事中心の生活で家庭のことをあまり顧みてこなかったようで、娘とコミュニケーションがとれません。妻ともとれてない感じです……
と、現代の社会問題と絡めながら物語は進んでゆきますが、中心にいるのは野島。私も身につまされますが、彼は職業人としても家庭人としてもなんだかポイントもタイミングもズレている感じで、視野が狭く、問題点を客観的に俯瞰して見ることができません。でも、この映画の最初の部分の描写からすると、彼は助監督としてはなかなか優秀で監督やスタッフとの関係もいいみたいです。小器用で調整役には向いているけど、肝心要のところでは何もできなかったり、余計なことをしてしまう…… そんなタイプでしょうか。
結局、野島は物語のラストで家庭人として、というか、人間として、かなり重い結末を受け止めざるを得なくなります。
ということで、この『逆火』、脚本、演出ともしっかりとしているし、俳優陣の演技も北村有起哉を筆頭にいいし、なかなかの傑作だと思いました。でも、この映画、好きか? って訊かれたら、私はうーんと唸りながらノーと答えると思います。確かによく計算された脚本、演出なのですが、作り手側のあざとさのようなものを感じてしまうんです。実は一番最初に決まっていたのはあの重いラストシーンではないか、あのラストありき、で後ろから前へとストーリーを構築していったのではないか、という考えが鑑賞直後に頭に浮かびました。そうなったのも、物語の運び方に人工的で不自然な何かを感じていたからかもしれません。緻密に計算されているけど、ちょっとあざとい。作り手側がこうなら、送り手側(配給側)も最初に書いたようにちょっとミステリーっぽく宣伝しようとしていて、これまた、あざとい。鑑賞後に違和感を感じてしまって評価に困ってしまう、そんな作品でした。
経営者としての「使命感」と「チームの本質」
『逆火(Backdraft)』は、炎と命の最前線で働く消防士たちの姿を描いた熱いヒューマンドラマである。1991年に公開されながら、今もなお色褪せないこの作品は、経営者にとって多くの気づきを与えてくれる。特に「使命感」「信頼」「危機管理」というテーマは、日々組織を率いる者として深く刺さるものがある。
物語の中心にあるのは、命懸けで火災と対峙する兄弟。過去に父を火災で亡くし、それでもなお火に向き合う彼らの姿からは、“逃げない覚悟”の重要性を教えられる。これは、経営の現場でも同じだ。困難な局面でも、「誰かがやらねばならない」と立ち向かう責任感が求められる。経営者はまさに、“組織の火消し役”であり、炎の中に飛び込む決断力が試される。
また、火災現場では一瞬の判断ミスが命取りになる。これは、顧客や社員の人生に関わる経営判断にも通じる。どんなに良い理念や仕組みを掲げても、それを「人」がどう運用するかによって成果は天と地ほど違ってくる。映画でも、見た目ではわからない“逆火”の恐ろしさが描かれていたように、組織でも“見えない火種”に目を配る力が不可欠だ。
たとえば、私たちが運営する温活専門店でもそうだ。店舗の空間づくりやお客様へのケアは、一見穏やかで静かなものだが、スタッフの小さな気づきや声かけが、リピートや信頼構築に直結する。地味で目立たない部分にも真剣に取り組む姿勢は、消防士の現場と本質的には同じである。
『逆火』は、熱さと緊張感に満ちた映画だが、その奥にあるのは「人の在り方」への問いかけだ。経営者として、何のために、誰のために挑み続けるのか。信頼と責任を背負う覚悟があるか。この映画を観たあと、自分のリーダーシップを見つめ直さずにはいられなかった。燃えるような情熱と、冷静な判断。両方を持つ経営者でありたいと強く思う。
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