劇場公開日 2025年7月11日

「絶望への行進」逆火 さとうきびさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 絶望への行進

2025年7月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

セピア色がかった画像。
昭和を感じさせるレトロなオフィスの室内。
やはり昭和を感じさせる半ば朽ちたようなアパートや建物群。
そんな風景を背景にしてある映画製作の光景が描き出されます。

感動的な実話の映画化に向けて最初は希望に溢れていた関係者たち。
けれどクランク・インが近づくにつれて漂いだした微かな不協和音がやがて轟音をたてて関係者を巻き込んでゆく様が、淡々としているだけにかえってその逃れようのない閉塞感と絶望を際立たせて描き出されます。

本作の主人公は映画の原作となった実話の少女を始めとした様々な立場の若い女性たちだと思いました。
レトロな背景と対照的な彼女たちのイマドキ風な生態。
様々な立場と言っても、それは皆が堕ちてゆく地獄にどれだけ近いか遠いかの違いに過ぎないように思われます。
素直に堕ちてゆく少女たちと、彼女たちを取り囲む建前と正論のバランスをとれない大人たち。
現代社会が孕んだ絶望感を斬新な切り口で提示した作品でした。
やりきりないなぁ…

逆火(ぎゃっか)は、ガス火炎を使用中に火炎が火口からガスの供給側へ戻る現象。 機器類を破裂させることがある。
(Wikipedia)

さとうきび