逆火のレビュー・感想・評価
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北村有起哉がもたらす葛藤のリアリティに引き込まれる
映画の中で「映画作り」の過程を描くというメタ的な構造を持ちながら、悪夢とも呼ぶべき製作の泥沼に陥っていくチームの姿を描く。火種となるのは、映画の原作を著した若き女性の半生だ。その内容の信憑性に疑問を抱いた北村有起哉演じる助監督がジレンマに立たされつつも自分の目で真偽を見極めようとする。彼は作品をめぐる虚実に翻弄され、映画人としての善悪にも翻弄される、いわばあらゆる境界線に立つ人だ。真面目で、仕事ができ、正義感が強い。映画に対する思いも人一倍。しかし彼が夢を追い続けることで家庭は崩壊寸前。その上、仮に彼が製作中止を主張したなら、製作費をドブに捨てるだけでなく、全スタッフの雇用を奪うことになる。この運命の分かれ道で彼が何を考え、何を思うのかをじっくりと炙り出した筆致が魅せるし、何よりも主演が北村だからこそのリアリティに見入ってしまう。硬派でストイックな触感と共に、ヒリヒリした余韻が残る作品だ。
残念
もう取り戻せない
映画副監督の野島(北村有起哉)の夢を叶えるのが、野島の正義。
(野島の家族)
・自分の夢のために家族を犠牲にしているという娘である光のコメントは的を射ている
・妻への扱いが酷い、非人道的だと感じる。自分本位すぎるゆえ、娘もこんなことに
(映画内映画)
・ARISA(丸井わん)が書いた事実をベースにした小説が原作
・この原作の事実関係を掘り下げる野島だが、嘘で塗り固められていることがわかる
・このまま映画化してよいのか逡巡する野島
・野島の正義では企画自体をやり直したいと考えている
(野島)
・ARISAの真実を WEB記者か取材されそうになり逡巡する
・自分が出したドキュメンタリーの企画は映画化が実現しそう
ARISA原作の映画は海外の映画賞を受賞していた。結局は脚本や企画は変えなかったに違いない
ラストでは野島が監督する映画の衣装合わせをやっているシーンがうつしだされるが
夢には一途だった野島が、結局は娘との関係性など、家族のことは回復できなかったであろうことが
娘の自殺シーン&娘のSNSでわかるという
実に後味の悪いエンディング。
ARISAの生き方と野島の娘 光の生き方、想像上で比較したりして、
娘にとっての毒父親の存在有無が、その後の人生を二分したのか、、、などと考えてしまった。
野島は正義の人っぽく描かれているものの、娘(家族)にとっては正義の人でなかったのだろう。
もう取り戻せない。
余韻が残る。
娘の裏アカを見ていた母親は、旦那の裏アカも見てたんかな。
あるいは娘も父親の裏アカみてたんかな、みたいな想像を走らせています。なんか家庭の空々しさ、崩壊の避けきれなさの強さwがゴツい。
前日アオショーという映画で留年学生に一学期分単位くれる校長がいましたが、この娘が父親のリサーチの仕事について回っていたら良かったかなと。家庭学校仕事の三権分立?がもう限界なのかな〜とか。飲み過ぎですね寝ます。
薄っぺらい正義感
映画監督になることを夢見ながら助監督として働いていた野島の次の仕事は、貧しい家庭で育ち父の介護をしながら、その後成功したARISAの自伝小説の映画化だった。しかしARISAの周辺で話を聞くうちに、小説に書かれた美談とは程遠い、疑惑が浮かび上がった。真実を追求しようとする野島だったが、名声を気にする監督や大ごとにしたくないプロデューサーらの思惑で撮影続行を望む人々から圧力をかけられた。やがて野島の娘の素行に問題が起き、彼の日常は・・・さてどうなる、という話。
野島のやってることに全く共感出来なかった。
あそこまで準備して映画のクランクイン直前にどうしたかったのか、観てもらえない作品を作りたかったのか、事実に基づくフィクションで良いんじゃない?って思って観てた。
薄っぺらな正義感、って誰か言ってたけど、まさにその通り。あんなことしてるから娘が○んでしまうんだろう。
あの娘も、なぜ1年も経って卒業間際にあんなことしたのだろう?するなら携帯壊された直後じゃないかな?タイミングがなぜあの時だったんだ?
北村有起哉がうざい助監督・野島役を好演してたのと、ARISA役の円井わんの正直な対応は良かった。
ドキドキしながら観れたし疑問は持ったが面白かった。
何もかも全部ウソだ!と…
貧困のヤングケアラーがその境遇をはね返して成功する美談を原作として映画製作が始まろうとしている。
しかし、実態は、娘はパパ活して、父を憎み、父の死をいつも願っていた。
父はいつも娘を殴っていた。
その娘が嘘をついて生命保険の作文コンクールで優勝し、成功のきっかけをつかむ。
お涙頂戴の本筋よりこの真実のほうがよほど映画として面白い気がする。
内田英治監督もそう思うのじゃないかしら。
プロデューサーの女性はそんな映画をひとは見たがるかしらとセリフを吐くが、内田監督はそれを嘘くさいセリフとして脚本を書いている気がする。
ラスト·ラブレターは国際的映画賞を受賞し、野島は老老介護の映画監督としてデビューするのであるから、野島もこの映画製作に協力したのだ。
みんな嘘くさい。
内田監督は「嘘くさいでしょ」と観客に言っている気がする。
野島はノンフィクションとして製作される映画が嘘で塗り固められていることに大きな葛藤を抱えているが、プロデューサーの言う通り、ARISAが父殺しをしていないなら大きな問題ではあるまい。
作文コンクールに嘘があったことも何ほどのことか。
ARISAは責任を取ると言っていた。
最後に自殺するのはARISAかと思ったら、野島の娘。
ARISAが自殺したのなら彼女は父を殺したのだろうが真実は闇のままだ。
野島の娘の内面を推し量るなら、スマホを破壊された時、徹底的に父を憎んだのだろう。
そして最も効果的なタイミングで父に復讐を果たした。
死顔は喜びに満ちていた。
この映画は二つの父殺しの物語のように見える。
野島の娘(光)はなぜあんなに父を憎んだのか。
もはや誰にも分からない。
正義、真実、生活、きれい事、葛藤、と作品全般に交錯するが、全部「嘘くさい」のだ。
これがこの映画の肝に思える。
内田英治監督はこれを意識的に描いていると思いたい。
「全部ウソでしょ」が娘(光)の自殺だと言うのは穿ち過ぎだろうか?
「逆火」とはバックファイヤー
エンジンにおいては、燃焼室で燃えきらなかったガスが、吸気側や排気側に逆流して爆発する現象を指します。
本来燃えるべきところで燃えずに、あってはならないところで燃料は爆発した。
これが裏目に出たと言う意味だ。
逆火は馴染みのある単語ではない。
謎掛けだと感じた。
有起哉さんとわんさんのふれあいが救いだった
家族を顧みず、映画監督になることを夢見ながら助監督として奔走する主人公・野島を北村有起哉さんが演じた。
貧しい家庭で育ちヤングケアラーとなりながらも起業し成功したARISAの自伝小説を映画化する企画。しかし小説に書かれた美談が嘘だと知った野島。
真実をありのまま撮るべきだという野島に大きな違和感を覚えた。観ているのが辛くなった。
そもそも映画は作りもの。嘘をもって真実を語るもの。何を伝えたいかがすべてだ。
映画監督のあるべき姿を示したのはお笑いコンビ「かもめんたる」の岩崎う大さん。名演だった。その落ち着き悟った佇まいが静かなインパクトを残した。
ARISAを演じた円井わんさんの出番が少なかったのがちょっぴり残念。ARISAが食い足りなかった。
飯が食えなくなるという叫びが心に残る。
「ぎゃっか」と読むらしい。問題提起したら素材に不良があって逆噴射、つくる側が火を浴びちゃったっていうことですね。
ARISAの過去に問題があることぐらい原作が世に出た時点で分かるだろう、最悪でも映画の企画段階で調査しないの?野島にしたところでも折り合いをつけられるタイミングはたくさんあったはずなのにどうしてそこまでこだわるのか?
と、ツッコミどころ満載ながら、クセのある役者の熱演に引きづられてあまり飽きることなく最後まで観てしまいました。
イヤミス(読了後に嫌な気分になるミステリ小説)っていうジャンル?があるが、この映画は「イヤシネ」ってところかな。
理由のわからないエンディングもその印象を強くしている〜どういう話をつけたのか映画関係者はまるく収まっている。主人公の娘だけ割りを食った。何かの罰か?〜
この作品の最大のポイントは、監督と野島の言い争いで、監督がヤングケアラーなど苦しんでいる子どもたちにこの映画を見せて勇気づけたい、というのに対して野島は、その子たちはこんな映画は観ない、映画は観たとしてもアニメかハリウッドのスーパーヒーローものだって言い返すところ。そこはすっかりこの作品にも言えるところで、鬼滅に追いやられて変な時間に観る羽目になったことから深く同意するのでした。
でもこの作品で一番印象に残ったところ。それは映画が中止になりそうで、スタッフたちが口々に訴えるところ。いわく「病院の支払いがある」「奨学金を返さなきゃいけない」「半年間、準備のため収入がなかったのに」。そして野島の娘の叫び「金をくれないからしょうがないだろ」。
文化を担うものの経済的支援ってもっと何とかならないんでしょうかね?外国人の生活保護がどうたら言っているよりも日本文化を継承するという意味では大事な課題だと思うのですが。
末路
自伝小説が映画化される事になったが本の内容が嘘かもしれないという疑惑を持った助監督・野島が追求していった先に辿り着いた真実とは。
主人公の野島は映画監督になるという夢を持っています。私には甲斐性なしにも見えたのですが、家庭を顧みないせいか妻との関係もいびつで娘は反抗心剥き出しです。
ARISAが書いた本の内容が嘘なのか本当なのかで物語を引っ張っていくのですが、むむ!そっちでしたかの流れに。考えられた構成なのだとは思いますがラストの展開は唐突な感じがして少し浮いて見えてしまいました。
そして野島は何故それが起きたのかさえ理解できないですね…きっと。
岩崎う大は芸人として好きなのですが、変態系の役をやらせるとより活きる気がします。
抜けている部分の想像
結末はどこへ行くのかというストーリー展開で、その行先の選択肢も色々あった中、オチはそれかという感じでした。
“映画とは芸術か?ビジネスか?”を題材とするケースは色々あると思います。
今作では原作となった小説に疑惑が出てからの展開ですが、そもそも撮影開始間際の段階で取材を続けて疑惑が炙り出されるということはあるのかな?と思いましたし、数年も前の小説に今さら疑問が出ても「小説を原作として基づいて映画化した」で問題はないのでは?と思いましたが、どうなのでしょうか。
抜けている部分は想像に任せるというところですが。
・野島は結局この映画の助監督は降りた、と察します。
・野島はリークしたのかしなかったのか、それは世間に伝えられたのか?
→映画は完成されて賞を取ったくらいなので何事もなかったと思えます。
・野島の娘はその後どういう生活だったのか?
→(高校生を続けているということだったが)病んでいたか引きこもりだったかと想像します。
映画賞を取ったニュースが流れるテレビは野島家のリビング?
ずっと家具や置物がなくて白けていたのは意味があると思いながら観ていましたが、時を経て豪華に変貌していたのも意味を持っているのでしょうか。
色々あった挙句にそれぞれが笑顔を迎えられた中、唯一不幸だったのが野島の娘というのが結末。
その後そこから野島はどうなるのかは想像を絶します。
ARISAのその後がどうなったのかも想像の世界。どうなったでしょうか。
この作品のメッセンジャーの一人は娘だと思いますが、この親にしてもあそこまで屈折するというのはないだろうというのも思いました。
ただ親のせいだけでなく、周囲の大人や環境は若者が自分勝手に壊れて落ちていく仕組みを作っているという、今の世の中の描写があるように思いました。
それはこの作品のテーマである“巻き込まれないで生きること”にも合致しているのかと思います。
こうやって色々振り返る衝撃度がある作品でした。
評価も分かれる作品でしょうが、間を取って3.5としました。
過去の偽りの代償、償いとは何だったのか
映画のクランクイン直前に、原作実話小説に疑惑が浮上。
助監督は、その小説の内容が真実であるかどうか調査を始めるが…。
それが嘘だった場合、映画に携わる大勢の人々の生活を犠牲にしてでも、告発し製作を中止するべきか。
倫理的な問題と、スタッフたちの生活の保障が無いという日本の映画製作に関わる問題点も描く。
好きな俳優、北村有起哉の主演作。
仕事として若い女性の美談の真偽を追求しながらも、生活が荒れている自分の娘からは逃げている。
家族を犠牲にして、自分の夢を追っている姿が実に痛々しい。
監督役の岩崎う大の静かで冷静な佇まいが実にリアル。
絶望的なラストは、同じ監督作の「ミッドナイトスワン」を思わせるが、「ミッド…」で若者に託された未来を切り開く力が、本作では親のエゴに力無く潰されてしまう違う方向の未来に着地してしまうのは、今の世の中に対する監督のどの程度の思いの込められた回答だろうか。
ただただ救いが無く重い。
描かれなかったARISAの思わせぶりな「償い」が知りたい。
重い。。。
映画自体が「逆火」?
もう少し問題提起があっても良かったかもしれない
今年167本目(合計1,708本目/今月(2025年7月度)16本目)。
ある事件で有名になった女子高生がコンクールか何かで出した小説が賞を取り、そこから有名人になり、その小説をもとにした映画を作ろうという段階になって、何かおかしくない?という展開。
「やや」ミニシアターよりの作品かなという印象はあります。ただ、ディズニーくらすの映画でもなければ、映画内でいう「何がどうであろうがこのまま進めないと間に合わない」という趣旨は当てはまると思います。
総じていえば、主人公(女子高生)と小説を受け取った出版社の間には双方の同意があるので問題にならないところ、その「真実らしきもの」を信頼した第三者をどう保護するかという外観法理的な観点でみました(あるいは、民法95条(錯誤))。ただ、それは形式的なもので、誰かが明らかに悪いわけではありません。
映画は「意外な展開」に向かいますが、この点は見てのお楽しみといったところでしょうか。
評価は以下まで考慮しています。
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(減点0.2/心裡留保と善意の第三者)
・ 心裡留保は、善意の第三者には対抗できません(序盤のところ)。
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地味
バックファイヤー🔥←なるほど
北村有起哉さん主演とあらば観ないわけにいかない!!と思って久々のテアトル新宿さんへ。
鬱展開なのにとっても静かでゆったりしていて(途中寝息すーすー聞こえるほど)爽やかさすら感じられる不思議な映画。
内田英治監督の作品ってこれまで観てきた(数少ない母数の中では)探偵マリコくらいしか刺さったものが無かったけどこれは考えさせられた‼️
考え方の違いはあれど、立場も役割も生活も何もかも違う人たちの集合体である社会の一面を切り取ってみたら『十人十色』という言葉がよく当てはまる。その切り取る一面を映画製作の助監督さん中心に映し出したという、社会の縮図の切り取りと映画製作の裏側がとってもわかりやすく描かれていた良作💜
そしてとにかく北村有起哉さんがいい✨
普通の人を普通に演じることが一番難しいんぢゃないかなーと思うんだけどお見事でした。
そして今も今後も楽しみな若手女優さんふたり(円井わんさんと中心愛ちゃん)も凄くいい!
複雑な苦い現実世界の肯定
現実の苦さをこれでもかと突きつけてくる映画。
その苦さを北村有起哉さんが見事に体現している。
映像の世界の裏方を物語の舞台として、
感動物語に偏向しがちな業界への批判、
合わせてビジネスという観点での難しさ、作り手の苦悩を
さまざまな立場の関係者の群像劇として
複雑、多層的にみせる構成がすばらしい。
冒頭とラストの屋上シーンの対比も見事。
自分に嘘をついても、逞しくしたたかな人間が生き延び、
自分に嘘をつけない正直な人間は、
救いの希少な現実世界に苦しみ、落ちていく。
明快な示唆、シンプルな答えによって
誰かが背中を押してくれることなんてほとんどなく、
それぞれが悩み、苦しんで答えを探していくしかない、
そんな複雑な現実世界を肯定してくれるような映画でした。
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