「説明のない物語」夏の砂の上 豆之介さんの映画レビュー(感想・評価)
説明のない物語
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冒頭の土砂降りが全ての水を流し切ってしまったようにこの映画は乾いている。何本吸ったか分からないオダギリジョーのタバコ、長崎の日差し、暑さ、坂に続く坂、ひたすら聞こえてくる蝉の声、人々の会話の内容。
最初の雨が我が子を奪ったとは一言もないが、夫婦にとってそれからの日々は乾き切っていたのだろう。優子役の髙石あかりさんの瞳が印象的。大きく見開かれていてもやっぱり乾いている。
伯父と姪の二人だけになった時の大雨。私はこの時しか人物の心が潤う場面を見つけられなかった。
皆が別れてこの映画は終わる。オダギリジョーに残ったのは一人だけの家、我が子の位牌、不自由になった身体。そこにまた蝉の声が振りそそぐ。
夫婦であり続けていたから二人の心は乾くばかりだったのではないか。台詞にはないが、優子と浴びた雨が心にほんの少しでも潤いを残しているのではないか。四人は離れたからこそそれぞれに何かが芽生えるのではないか。
心情を口にする場面はほとんどない。それなのに何か語りかけてくる。それを説明することはできないが、四人の心に雨が降ってくれればと願う映画だった。
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