「オダギリジョーのオダギリジョーによるオダギリジョーのための映画」夏の砂の上 Whiterockさんの映画レビュー(感想・評価)
オダギリジョーのオダギリジョーによるオダギリジョーのための映画
孤独に生きている男性に、次々と悪夢が襲い掛かる……。九州は長崎。造船会社で溶接工として働いていたオダギリジョー。幼い息子を大雨の洪水で流されて亡くし、造船会社は倒産した上、妻は同僚に奪われ、博多の飲み屋で働くことになった妹の子供を預かることになり、元職場の先輩は交通事故で亡くなってしまう。再就職した中華料理屋では不注意で左手の指を包丁で飛ばし、そしてついに妻は広島の造船所に仕事を見つけた同僚に付いていくことになり離婚届に判を押すのだった。そうして手痛い裏切りに遭った後、博多で裏切られた妹は今度は子供を連れて、新しい彼氏と和食料理店を出すとカナダに旅立ってしまう。
彼女たちを見送り独り残されたオダギリジョーは、長崎らしい坂道を家路に向かう。オープニングと同じようにトヨタのヤリスが急な坂を下って行き、オダギリジョーは坂道の途中で煙草屋に寄り、今日も暑いね、と声をかけられ¥500で一箱のタバコを買って行く。いつもの独りの生活に戻ったのだと悟らせる情景。そして、家の前の階段で振り向き、汗をぬぐいながら長崎の町を眺めるオダギリジョー。下からカメラが追う彼の背景の真っ青な空と白い雲が、左手に大怪我を背負い孤独な彼の生活が、それでも上手く続いていくという予感で終わらせる。
見終わって残った印象が、アキ・カウリスマキ監督の「街のあかり」と似ているなぁ、と思いながら劇場を出た。
昨今、造船会社が復活してきて嬉しいんですが、映画で長崎の三菱造船所の明治時代の艤装クレーンと懐かしい福山の名前が出て来たこと、それにそもそもオダギリジョー贔屓なので+0.5しました (笑)
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