「人生における転機というのは、お天道様の機嫌ぐらい曖昧なものかもしれません」夏の砂の上 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
人生における転機というのは、お天道様の機嫌ぐらい曖昧なものかもしれません
2025.7.5 イオンシネマ久御山
2025年の日本映画(101分、G)
原作は松田正隆の戯曲『夏の砂の上』
妹の娘を預かることになった失業中の男を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本は玉田真也
物語の舞台は、長崎県長崎市
かつて造船所で働いていた小浦治(オダギリジョー)は、会社の倒産によって失業し、次の職を探さないまま日々を過ごしていた
妻・恵子(松たか子)は愛想を尽かして出て行ったが、元部下の陳野(森山直太朗)と不倫関係にあると噂されていた
ある日のこと、治の元に妹の阿佐子(満島ひかり)がやってきた
博多で店を開くために娘・優子(髙石あかり)を預かれと言うもので、有無を言わさずに置いていく
優子は未成年だったが、近くのスーパーで働くことを決めていて、金銭的な負担ははいと言う
そんな様子を観ていた恵子は呆れ果て、何も言い残さないままどこかへと消えていく
それから治は、どう接して良いかわからぬ年頃の娘と共同生活をすることになったである
治は元同僚の持田(光石研)の再就職宴会に呼ばれ、そこであることないことを言われてしまう
そこには陳野もいて、噂話は尾鰭が付いていた
新しい女でもできたかと言われる始末で、生きた心地のしない夜を過ごすことになった
映画では、優子のバイト先でも飲み会が行われ、大学生の立山(高橋文哉)から言い寄られる優子が描かれていく
優子は自分に起こることを拒絶しないタイプで、興味本位で立山と付き合いを深めていく
それに対して、治は自分からは決して動かず、自分に起こる事もスルーするタイプだった
何を考えて生きているのか読めないものの、何とかなると気楽に構えていた
そんな治もやがて再就職をすることになるが、恵子との関係悪化が衆目の元となり、正式に離婚することになったのである
映画の冒頭では、干上がった川や溝などが強調され、給水車が出るほどの水不足になっていることが描かれていく
そんな日々も突然の大雨によって終わりを告げ、渇望しても降らず、忘れた頃に降ってくると言う感じに描かれていた
人生に起こる事もこれと同じで、意図して出来事に遭遇することはないと言える
映画のタイトルは『夏の砂の上』で、要は乾き切っていると言う意味になるのだと思う
元々海にいたハズの砂も、やがては海岸に打ち上げられ、海とは無縁のものとなっていく
彼らが潤うのは雨が降った時だけだが、彼らがその時を待っているとも思えない
すぐ近くに潤いがあるとしても、それを感じるのは人間だけで、砂はそんなことを思いもしない
そんな場所に足を踏み入れる私たちは、砂を憐れむかもしれないが、ただ熱いだけと思う人もいるように、その状態をどう受け止めるのかは、人それぞれと言えるのかな、と感じた
いずれにせよ、戯曲ベースなので演技力が必要な作品だったと思う
キャスティングがしっかりしているので、そう言った不安点もなく、淡々とした日常でほとんど何も起こらないのにずっと観ていられるのは凄いと思う
俯瞰的に見れば、治を取り巻く女性は大概だと思うが、そんな中にいて優子だけはまともに見えてしまう
治と真逆の気質で、何でも吸収してしまいがちだが、それが若さと言うものかもしれない
そう言った意味において、優子との出会いは治を少しだけ変えたのかな、と感じた
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