「完璧な駄作です」ルノワール クニオさんの映画レビュー(感想・評価)
完璧な駄作です
河瀨直美に引続き、カンヌ受け狙いの空疎な駄作です。クレジットからして英語の氾濫、内容にまるで関係ないルノアールの美少女画が一瞬見えるだけでこのタイトル、おこがましいったらありゃしません。ブラウン管テレビの時代と主人公の心理となんの必然もなく、多分監督自身の記憶を描きたいがための1980年代って、普遍性に寄り添えない力量を露呈しているようなもの。
男の子と違って小5の女の子は複雑でしょう、その曖昧を描きたいのは理解出来ます。 冒頭の自分の葬式シーンは秀逸ですが、後が続かない。孤児になってみたい妄想もきちんと画にして、担任教諭を翻弄して欲しかった。変わっているのは先生の方と、親子そろって変なのを明確にすれば映画のスタートダッシュは完璧になったのにね。
以降脈略なくエピソードがダンゴ状に描かれる、メリハリもなく落ちもなく、ひたすら退屈地獄。お目当ての河合優美が唐突に現れ、映画冒頭の子供達の泣き顔モンタージュの違和感をセリフのみで語りだす。もう一人のお気に入り役者である中島歩の怪しげなメソッドインストラクターは母親のためのと言うより、フキにとっは宇宙人の如く映ったはず。いかんせん母親の描き混みがいい加減なので、折角の中島が活きない。
総じて、私って、こんなに変わってて感受性豊かだったのよー、とアピールしているようで、少女の好奇心がまるで昇華してないのです。ロリコン青年の危険な描写も随分とサラリと描くのみ、もちろん少女は危険なんて思って見みないでしょが、唐突に風呂場に押し込まれフタをされる、それだけで相当な恐怖に繋がるのがフツーでしょ。なのにフタを開けても騒ぎもせず、なにより真夏の密室に閉じ込められれば息苦しく汗もかき不安が滲み出る、その「湿気感」がまるで描けないから貶すしかないのです。
相米慎二や是枝裕和と比べるなんておこがましい。ショーン・ベイカーの
の「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」2017年 の少女と比べれば一目瞭然、画面の中で少女が生きていないのですね。本作の女の子「フキ」は事象を描く媒体にしかなり得てないと思うのです。どうでもいい、なんてことない事象でも積み重ねにより観客の心を揺さぶるのですがね。「スタンド・バイ・ミー」1986年 の刹那は当然監督の頭の中に在ったはず、でもその足元にも及ばないのは、多分、賢過ぎる子役である鈴木唯ちゃんに依存し過ぎたせいでしょう。唯ちゃんを責める気は毛頭ありません、起用の仕方を誤った監督に責任があるのです。
周りのヨイショに担がれて、実力もないのに、煽てに乗ったのが本質なのかもしれません。豪華ヨットの船上で踊るなんて、夢にしても必然がない。真っ先にカットすべきシークエンスだったのに。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。