ルノワールのレビュー・感想・評価
全3件を表示
青山真治の『Helpless』思い出した
なんでこんなに奇跡のような芝居ばかりできるんだ!
芝居じゃないから奇跡だって思ってしまうのか
あのハグの手の置き方とか返事の仕方とか
演出なのか脚本なのか奇跡なのか、なんだっていいんだけどなんでこんなことできるんだろうってただただ驚き、ただただ感動
「ああ、久しぶりに映画を見たな」
と思ったのは、
説明のカットを飛ばしていたり、人物が画面外を見つめていたり、テーマは暗いところにひっそりとあって目立たず、変なカット、変なシーンと思っても、後でそれらが積み重なって訳もわからず涙が出てくる構成のように
他の芸術が持っていない編集と、映画の持つフレーム外
この二つでで遊んでて?利用して?
いるのが嬉しくて
「ああ映画を見たな」と思ったのかな?(何も気持ちがまとまってなくて草)
すごく嬉しかったんです。
そのカットを見せないとか、そのフレーム外を映さないとか、その、なんだろう、観客の私たちを信じてくれている感じといいますか、「みなまでいわすな」みたいな姿勢とか、「こんなんでいいのよっ」みたいな軽やかさとか、
ほんとにあの手を繋いであなたの頭の中のカード番号を当てるゲームと同じで、私たちが映画を眼差しているだけなのに、「ああ!つたわるよ!伝わってるよ!」って、面白いくらい伝わるし、そういう会話の方がなんか楽しい、、、
好きな人と目配せして(あれ)(ね、)みたいな、2人だけの眉毛だけの会話してる感覚みたいな!
余白なんて一切ない、白紙の映画
泣く顔で始り、笑う顔で終わる。極めて希望に満ちたような終わり方である。しかしそれで良いのか?この映画は何をしたかったのか、これは全く分からなかった。
フキが出会う数人の大人との点描的なシーンで積み上げられる時間を扱っている、それぞれのシーンの大人とフキの関係性にはいくつかの解釈が許されているように物語上で説明されることは少ない。これは観客に委ねているに違いないのであるが、それを全て「余白」という都合の良い言葉で纏め上げて高尚な雰囲気にしてしまうのは、いかがなものだろうか。
まずこの作品の時代設定にいささか疑問を持たざるを得ない。80年代後半なのは分かる、しかし、インサートで挿入される電車は余りにも現代のものであり、LEDすら登場する。サマーキャンプでの『RYDEEN』もある種テクノ×キャンプというミスマッチを演出するシュール的且つ時代設定を説得するために?使用されるが、、、しかも『RYDEEN』は79年の楽曲である。自分はあまりここら辺の時代感をダイレクトに吸い取ることはできないが、聞く人が聞いたら果たしてどう思うのか。どっちにせよクレバーな使い方とは言えない。おそらく監督にもそこら辺の教養はないのだろう。ガバガバな時代設定は最後まで80年代後半である必要性を認めさせてくれない。
主人公のフキは、役割不能に陥っている父親とその面倒に追われている母親の元、放置されている。ネグレクトではないが、信頼して生活を任せられているとも言えない塩梅だろう。
そうやって一時的な自由を手に入れた子供だったらどこまで跳躍して親元から離れていくか、これによって得られた一夏の経験は9/1には彼女をどこまでも無敵な小学5年生に大きくさせる。たとえそれが様々な大人に迷惑を掛けたとしても、だ。ガキの加虐性と奔放さに向き合うには格好の題材である、にも関わらず点描法で上部しか攫わない関係性の蓄積という断片性に目をむけてしまったため、フキは大変大人しい。ただ相手を正面から眼差すだけでシーンが終わると関係は続かない。フキに魅力を感じるか否かは観客それぞれだろうが、なんかあまり可愛気はなく、かと言って大人を振り回すほどのエネルギーを持ち合わせてもいない。英語教室になんか通わされて上流階級の友達を見つけては、彼女の家でケーキや靴下をもらう。履いている靴下は袋に縛られる。これ自分の娘がそうされて帰宅したら母親としてはとても侮辱に感じやしないか??なのにこの作品では汚い靴下と同様にシーンすらゴミ箱に入れらてしまう始末だ。フキは座って大人の営みに巻き込まれていくだけに終始する。その結果彼女が興味を持つのは、超能力やマジックなのだ(テレパシーを使ったラストシーンも品がない)。あみこの方がより生き生きとしていた子供を映した素晴らしい映画だ。『ミツバチのささやき』になんて到底及びもしない。
タイトルにもあるルノワール。だいぶ大きく出たな、光や自然というものをさぞ美しく描いているのだと大きな期待を抱いたが、これは結局カンヌへの目配せなのか??『PLAN75』の時にも題材の選び方が映画祭へのおべっか以上の深掘りはされていなかったが、本作も結局大した提示もないまま、あらゆるものが中途半端に垂れ流されていった。
ムーディー勝山的「PLAN11」とでも言おうか。
フキの子どもらしい感性と好奇心に満たされる
真っ直ぐで、無垢で、豊かで、ちょっぴり残酷で、何よりも個性的なフキの感性と好奇心。
誰かと出会う度、何色にも染まり、何層にも色を重ね、元の色を変化しながら新しい色を作っていく。
なんて豊かで美しい色彩なんだろう!
厳しく複雑な大人の世界をも包み込む彼女の色と光に圧倒された2時間だった。
彼女を取り囲む大人はみんなちょっとずつ欠けていて、あまり幸せそうじゃないけど、彼女はそれに対して胸を痛めて一緒に悩んだりはしない。
わからないものをそのまま丸ごと解らないものとして理解できてしまう、子どもの素直さとか純粋さが生き生きと描かれている。
なんかそれがすごくリアルで、必ず一度はみんな通る子ども時代をみんな思い出すと思う。
主演の鈴木唯ちゃんのナチュラルな演技がすごかった。
全3件を表示