劇場公開日 2025年7月4日

「『キャンドルスティック』:飲食と空間演出が創る人間模様」キャンドルスティック 林文臣さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0『キャンドルスティック』:飲食と空間演出が創る人間模様

2025年7月8日
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『キャンドルスティック』は、わずか一室で繰り広げられる心理劇でありながら、その空間に宿る緊張感と対話の妙が観る者を引き込む密室サスペンスの秀作だ。舞台は一見洗練されたディナーの場。ワインを片手に、会話を重ねる登場人物たちが織りなす静かな駆け引き。しかし、時間が経つにつれ、友情や恋愛、裏切り、そして殺意すら垣間見える空気へと変貌していく。

経営者としてこの作品から強く学べるのは、「飲食」が持つ場の力と、人間関係に与える影響だ。食事の場はただの腹を満たすものではなく、会話を生み、信頼や疑念を育てる”ビジネスの舞台”になりうる。登場人物が口にする料理やワイン、キャンドルの灯り、室内の静けさすべてが、人の感情を引き出す演出装置として機能していた。

またこの映画は、人の本音は“非言語”に宿ることを思い出させてくれる。表面上は笑顔で語らいながらも、視線の動き、グラスを持つ手の緊張、沈黙の間——それらが不安や攻撃性を浮かび上がらせる。これは組織運営にも通ずる要素で、社員やパートナーの“沈黙の声”を拾えるかどうかは、経営者としての器量が問われる。

限られた時間と空間を最大限に活かし、人間関係の複雑さと怖さ、そして飲食の持つ「空気を動かす力」を見事に描き切った本作は、経営者にとっても極めて示唆に富む一作だ。飲食は、経営においても人間関係構築においても、極めて戦略的なツールであることを、改めて実感させてくれる。

林文臣
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