「格外の芸術作品」アブラハム渓谷 完全版 sugar breadさんの映画レビュー(感想・評価)
格外の芸術作品
「ボヴァリー夫人」をベースにしているようだがストーリーにはこだわらず、203分の大河の流れに身をゆだねる。
美術館で西洋名画を鑑賞してまわっているような、息をのむ撮影の連打。
特にすごかったのは、エマが夜カルロスの寝室を訪れる悪魔的ショット‼︎ 闇に蝋燭の灯が浮かび、エマの輪郭がぼやっと映り近づいてくる。
ドウロ川や渓谷をとらえた画はもちろんのこと、他にも屋敷の格子窓、水上ボートを正面からとらえた疾走感、家族で見上げる花火、オレンジの林を抜けるエマの表情など本当に素晴らしい。
レオノール・シルヴェイラの比類なき美しさ!着せ替え人形のように変わる衣装や静物のような猫にも映え、凛としているが淋しさも感じさせる表情に魅了される。
足を引きずる動作へのフェチ視線に既視感を覚えると思ったら、ブニュエルの「哀しみのトリスターナ」だ。
そう言えば「昼顔」の続編も作っていたし、オリヴェイラは美女を愛でる映画でブニュエルへの意識があったのかも知れない。
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