「「ボランティアとは」「国際協力とは」ということの意味の再考を厳しく迫られる作品」OKAは手ぶらでやってくる Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)
「ボランティアとは」「国際協力とは」ということの意味の再考を厳しく迫られる作品
ニックネームでOKAと呼ばれ東南アジアで長年にわたってボランティア活動に従事し、2022年に71歳で他界した栗本英世氏の、ある意味壮絶とも言える人生の、ドキュメタリー作品。なお、OKAはクメール語で「機会、チャンス」を意味する ឱកាស からきている。
一言で「ボランティア」といっても年季の入り方が違う。滋賀の近江八幡でかなり厳しい環境で育った生い立ちと、幼い頃の心の支えとなった教会の影響で、14〜15歳の頃から奉仕活動に従事し始め、牧師を志し神学校に進むも理想と現実のギャップから牧師を諦め、海外に飛び出し、タイを中心に人身売買の犠牲者を救う活動に従事し、またバブル期には日系企業相手に通訳やコーディネートするビジネスで大成功するも心を病んでラオスに逃げ出し、最終的にたどり着いたのが内戦後のカンボジアのポイペト。寺子屋と呼ぶ学校を作り教育の機会を授けることで人身売買の犠牲になることを未然に防ぎ、身寄りのない子どもたちを家族同然に受け入れる。
牧師にこそならなかったが、芯の底からクリスチャンとしての奉仕の精神を全うした人生だったということであろう。
私自身、なんだかんだで、本業とは別に学生を動員しながらの支援活動をあれこれ国内外で四半世紀続けてきているし、国際協力に関する講演をする機会がある毎に「あげる支援」よりも「あげない支援」を、と説いてきた。
でも、いや、だからこそ、「『相手の立場に立つこと』と『相手と同じ目線に立つこと』はボランティア活動にとって毒となる考え方だ」というOKAさんのことばは胸に突き刺さった。タイトルの「手ぶらで」というのも端的にこの考え方を反映しているのだろう。
要するに、「同じ目線で」等というのは、「上から目線」ではなくても、結局、「してやってる」感が抜けないんだろう。
老子の「授人以魚 不如授人以漁」(飢えた漁師には魚ではなく網を与えよ)も頭によぎったが、むしろ「一緒に魚を釣りに行こう」の方が考え方としては近いのかも。
いずれにせよ、「ボランティアとは」「国際協力とは」ということの意味の再考を厳しく迫られる作品だったことは間違いない。
上映後、牧田敬祐監督と皆元 聡さん、そしてモデレーター役に映画監督の原一男氏が登壇するトークショーが開催され、様々な話を聞いてきたが、そこでOKAさんの活動にインスピレーションを得て作られた船戸与一氏によるフィクション小説『夢は荒れ地を』という作品があることを知った。