劇場公開日 2025年5月9日

「現代的な示唆。」リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界 時示郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 現代的な示唆。

2025年5月19日
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鑑賞方法:映画館

斬新

癒される

シンプルなストーリーながら大きな示唆を与える作品だと思いました。主人公の女性写真家は己の自然な感情に忠実に行動するため、混迷する社会の中で自由の保障の大切さがよく訴求されています。日本人は先の大戦でナチスと同盟を結んで連合国に対して闘った訳ですが、やはりこの種の映画にどこまで真実味があるのか、またオカルト伝説ではヒトラー生存説というのがあり、ひいてはグローバル事象における報道写真の意義とは等の批判があるとは思います。この写真家はうまく大戦シナリオに乗っかった活動家と観る事も可能なわけです。しかしそれらの諸点を考慮しても、自然な自由への抑圧には断固たる反対が必要だと云う目的意識の点は非常に現代的な意義を捕えていると思います。民主化の目的とは何か、それは生きる意味の再確認・再獲得のプロセスに他ならず、当時ではなく現代群像に目を向れば何もできない・何も撮れない私たちこそ現代政治の主役たらねばならない、そんな情趣も思わせる映画です。

時示郎