「最後に彼女の思いが浮かびあがる」リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界 キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
最後に彼女の思いが浮かびあがる
不勉強者の私には、大戦当時の米・英・仏・独がよく分からず、彼女の真意も掴めないまま、中盤辺りまでなんとなくフワフワと眺めていた。
「フワフワ」の原因は、やはりこのリーミラーが「シビルウォー」の主人公のモチーフだということも大きい。
報道というものの暴力性が、私にはやはり従軍記者・ジャーナリストという人々についてはいつも気になってしまう。
もちろん戦場で実際に起こっていることを世界に知らしめることの意義は絶大だ。
しかし、それがジャーナリストの私欲や単なる自己実現のためのプロセスとしてのみ機能しているなら、それは「暴力」になりうる。
「シビルウォー」は報道の正義を描きながら、そこに呑まれていく人々も視野に入れているという意味で価値があったと思う。
そして本作。
主人公のリーは、比較的奔放で自意識が強く、自立していてバイタリティもある活動的な女性として描かれる。
撮られる側だった彼女が撮る側に回り、戦地を撮ることに心を奪われていく。
いかにも、(あえてこの言葉を使います)「男勝り」な女性が他の反対を押し切って、活躍の場を求めていく感じ。
正直、途中までは若干「ノれないな」、と思いながら観ていくと、彼女のバイタリティがちゃんと「報道の正義」に繋がっているのが徐々に伝わってくる。
終盤、Vogueの事務所に怒鳴り込み、編集長を前にした自分語りで彼女の行動の根拠となる過去が示されて、それまで私の中でフワフワとしていたものが、まるで印画紙に焼き付けられる様に実体化する。
確かに、彼女のレンズは戦地においても「破壊」や「兵器」といった加害者側ではなく、いつも弱者に向けられていた。
その弱者の存在を世界が認知することで、彼女自身が強制的に葬ってきた過去にも決着がつけられると信じた。
彼女の残した写真が、彼女の死後、ようやく歴史的に大きな意味を持つものとして脚光を浴びるのは皮肉ではあるが、だからこそ報道が「自分だけのためではない」ということを示した本作の価値は重要なんだろう。
ただ、やはり私には彼女の意図を図りかねる行動なんかもあって、自分が彼女、ひいてはこの作品をちゃんと理解しているとは思えないってところも多い。
パンフレット買って知識を補強せねば。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。