「人生に灯りがともる瞬間」Mr.ノボカイン うぐいすさんの映画レビュー(感想・評価)
人生に灯りがともる瞬間
痛覚を持たない主人公・ネイトが、銀行強盗の人質にされてしまった同僚・シェリーを奪還するため体を張って強盗チームを追う物語。
予告編を観て、いきなり騒動が始まるタイプのドタバタコメディかと思っていたが、波乱のスタートまでには、痛覚がない生活の危機管理方法やネイトがシェリーに深く惹かれる過程、痛覚はないが触覚はあるムーブの描写など、丁寧な導入がされていた。そのおかげで、ネイトの心配や応援をしながら物語により深く入れたように思う。
予告編で強調されていたR描写も、無暗に凄惨さを加速させたり茶化したりするタイプの品の無いグロではなく、様々なピンチのシチュエーションを作り出すことによってストーリーの中で緩急として効いていた。
アクション映画や戦争映画で痛みの演技に目を見張ることはあるが、痛みゼロ・痛みエアプぶりに着目する日が来るとは思わなかった(笑)。体に受ける衝撃よりも心に衝撃を受けた時の表情が壮絶なのも心憎い。
アクションコメディとしても異色主人公モノとしても面白く、また実在する難病を扱うエンタメ作品として、物語やキャラクターづくりに注意を払っているのが伝わった。
以前、病名は失念してしまったがドキュメンタリーで痛覚がない病気のルポを見たことがある。ネイトと同じか類似した病気だったのだろう。痛覚がないことは生物として自分の危険を回避するための経験が積めないことはもちろん、物や他者に触れる力加減がわからない困難さもあるようだった。
作品の説明ではネイトを『全く痛みを感じないが、それ以外には何も特別なものをもたない男』とダメ主人公として表現しているが、彼がここまで生きてきた事実と社会参加できている現状は、彼が病気と真剣に向き合った両親に愛されて育ち、彼自身も慎重かつ冷静に生きてきた証明だと思う。
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