「注意一生、怪我一秒。」Mr.ノボカイン がばちょうさんの映画レビュー(感想・評価)
注意一生、怪我一秒。
主人公の特性が「無痛覚」。
同系のネタについては子供の頃から漫画などで散々摂取して来た自負がある。
その単語だけで、どんな「痛み」でストーリーが進行するのか妄想が広がり、なんなら勝手に目を背けたくなるまでが余裕であった。
だがしかし、それはあくまで漫画というファンタジー2次元世界での経験値であり、「実写」だと生々しさが違った。
元来、ホラー映画は大好きだけどスプラッタ描写は大の苦手で、薄目で見たり耳を塞いだり、最終手段として早送りでシーンを確認して心の準備をして巻き戻してからの視聴を常とする身。
スクリーンに血が飛び散る度に伝わって来る痛みを、我が身の共感能力を恨みながら必死にやり過ごした。
だがそれが幸いしたのかもしれない。
余裕のなくなった思考のおかげで変な先読みや勘繰りが滞り、おまけ程度の伏線と回収が普通に楽しめてしまったり、ギャグ要素が俄然面白く感じられてしまうという副作用。
なんなら、襲いかかる不幸の嵐にも、無痛が故にひょうひょうと乗り越える主人公の表情に、我が人生を重ねて癒されるまであった。
この感じ、既視感が2つ浮かんだ。
ひとつはドリフのコント。ステージ上、頭上や背後から次々に降って湧いて来る災難。思わず「志村、後ろ〜!」と叫びつつも、タライに頭を打たれて悶える姿に大笑いした少年の頃。
もうひとつはジャッキー・チェンのスタント。ギリギリを狙うあまりに痛々しいシーンばかりなのに、コミカルな演技と笑顔が悲壮感をかき消してくれるから、驚きと笑いだけを目一杯楽しめた。
そうか、これは「カトちゃんケンちゃんごきげんTV」の18禁版(※実際はPG12)であり、主人公の受け身体質はもはや抽象化されたジャッキースタントなのだ。
そう考えると色々腑に落ちた。
ならば、目を背けたくなるシーンも、傍観者の立場から全力で大笑いするのが礼儀というもの。そう覚悟を決めたクライマックスのあたりからは、それはそれは楽しい時間でしたよ。
…薄目は最後まで解除できなかったけど。
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