犬の裁判のレビュー・感想・評価
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現代社会の根深い問題を笑いを通してあぶり出す力作
どうかなぁ~と思いながら観た、フランスの社会派コメディ
すごく良かったです。
基本は法廷ものです。
人に噛みついた犬に情状酌量の余地があるかどうかを法廷で争うのですが、欧米の法廷劇、私は意外と好きです。
日本の法廷物って原告、被告双方の代理人が感情に訴えようとするイメージがあるのですが、欧米の法廷劇の論戦は非常に論理的です。厳密にその行為の法解釈を争うロジカルな部分が魅力です。
本作は、その犬の「犯罪」に絡めて都会人の自然感、身勝手な動物との関わり方、ジェンダーギャップ、格差社会、移民問題などについて問題提起がなされ
DVに苦しむ隣人の少年や、政界への進出を目論んで世論を利用しようとする原告側弁護士など、現代的な風潮が盛り込まれ
コメディとはいえ、十分見ごたえのある内容でした。
主要な登場人物が皆、弁が立つこと立つこと。
法廷以外でも様々な舌戦が繰り広げられ、その見事さに話し下手な私としては感嘆の念しかありませんでした。
怒鳴り合いみたいな状況でも意外と理路整然としているところは文化の違いだなぁと思います。
犬を被告とした法廷劇。
現代社会の根深い問題を笑いを通してあぶり出す力作でした。
なに言ってるんだか、訳わからない
スイスで実際にあった出来事を物語にしたとか。 犬が人の顔を嚙んだと...
前提にある知識を知らないと理解に詰まるか
今年138本目(合計1,679本目/今月(2025年6月度)1本目)。
実話をもとにはしているのですが、そのことはかなり前の話だし、法律的な話がちらちらっと出てくるのが厳しいかなといったところです。
中世ヨーロッパ以降、この映画のように動物を裁判にかけるということは実際に行われており、これを「動物裁判」といいます。その中でも牛や馬、犬、オオカミなど一般的に「動物」とされるものが裁判所(とはいえ、三権分立もまだ発達していなかったので、ここでは国王直属の裁判所といったほうが良い)、ネズミや蜂、ハエなどの「小動物」は教会(カトリック教会)における教会法(カノン法)に基づく裁判所と分けられていました。
このことはヨーロッパでは当たり前に行われており、一見すると動物にも人権と同じ考え方を与えていたように思えますが、疫病が絶えなかった中世ヨーロッパ以降では疫病をもたらす動物は畏怖の対象であり(科学・医学というものが発展するのはルネサンス以降)、さらには「山火事の原因」として「山」まで訴えられるというヘンテコな裁判も当時はありました。
映画で述べる「事実に基づく」というのはこの意味で、またこのような裁判は科学の未発達から生じた「自然への畏怖」が元になって実際に行われていた事情から、「自分たちと異なるものを遠ざける」という(こうした一見「真面目な」裁判とは裏腹に)考え方は、それこそ魔女狩りや、近代以降だとユダヤ人迫害、あるいは現在でも女性差別ほか色々なところにあらわれてきます。映画内では中世で実際に行われていた動物裁判と、現在でもやはりのこる女性差別や移民差別(映画内では、ポルトガル移民の話がちらっと出てくる)等と絡めて描かれています。
なお、映画内では字幕にふりがながないのでわかりにくいですが、「物」は(現在の裁判制度でいうところの)「ぶつ」です(「もの」とは読まない)。また、そもそも論でいえば、本映画でいう裁判は日本の分類でいえば刑事裁判にあたりますが、処分が予定されている犬に対する取消しを求める取消訴訟を選択する裁判(行政事件訴訟法)とも解することは可能です(後者の立場からは描かれていない。ただ、そのような解釈も資格持ちは可能)。
全般的にこのような事情(中世における動物裁判の歴史や、それがもたらした弊害)を知らないと、女性差別や移民差別といった問題に飛ぶ理由がわからず、そこで多くの方がつまづくのではないかな…といったところです。気軽に見られる映画と思いきや実はそこそこの知識を要求する点で厳しいといったところです。
採点に関しては以下まで考慮しています。
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(減点0.2/「物」のフリガナがない点について)
この点は本映画は実質的に法律ネタ映画であることまで考えると、民法、民事訴訟法(刑事訴訟法)にいう「物」は「ぶつ」としか読みませんので、その誘導はいるのではないか…というところです(このあたりは資格持ちは気にするところ)。
(減点0.5/上記のような歴史事情がないと何を述べたいのかわからなくなる)
実際はこちらのほうが大きく、中世ヨーロッパ以降に実際に行われた動物裁判に関する知識がないと、このような珍妙な展開になることの理解が難しく、ネタ映画なのかという状態になるので注意です。
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(減点なし/参考/日本の場合)
日本では、民法718条が適用されます(刑法は人に対してしか適用できません)。
※ 刑法1条
この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。
(民法718条) ※ 2項省略。
動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。
※ よって、占有者(飼い主)が責任を負うのであって、動物が責任を負うことは民法上ありえないし、人を裁くことしか想定されていない刑法も発動しないので、日本ではこのような展開にはなりません。ただ、中世ヨーロッパ以降で行われていた「動物裁判」は、日本を含む東アジアでも、日本の江戸時代や、李氏朝鮮などでも数は少ないながらも歴史は存在します(日本、韓国(ここでは便宜上使う語)とも、日本でいう明治維新後はこのようなことは行われなくなりました)。
ケッサク、そして傑作。
映画の舞台はスイスだが、
フランスの小さな町の出来事に基づいているという。
被告となった主人公ならぬ主犬公は、雑種の「コスモス」。
苗字なし、8歳、無職、男性。
演じたコディは、その表情豊かな演技で、ベネチア映画祭の
「パルム・ドール(最高賞)」ならぬ「パルム・ドッグ」を受賞。
初めから、次々笑わせにくる。
そして、ちゃんと次々笑える。
どうして犬が被告になったのか、というと、
「人を3回噛んだ犬は安楽死」という法律を回避するためには、
犬が飼い主の「所有物」ではない、と主張せざるを得ない、と考えた
敗訴してばかりの弁護士アヴリル(レティシア・ドッシュ。監督も)の作戦が
誤算で招いた結果だったんである。
(それを判事に認めさせようとする場面も、笑笑…)
他方、アヴリルの住む高層マンションの隣室には、
12歳の少年が両親と住んでいるんだが、
彼は親から虐待を受けていて、
どうやらアヴリルはそれを何とかしようとして逆に「接近禁止」命令を受けているらしい、
という状況もあり。
(ちなみにこの少年がまた、いい味出してる)
さらには、原告側の弁護人が、
政界進出して右翼政党を立ち上げ、
ポピュリズム街道邁進中の女性だったり。
現代のさまざまな問題もからめて
物語は進むんだけれど
――この後は、ネタバレなしには語れませぬが、結論を言えば、
「自然界における人間という存在」について
深い洞察と大きな啓示が与えられる傑作でありました。
そしてコスモス(コディ)が、
こよなく可愛かったのでありました。
所詮─
名優コディの神演技(人間目線ですが)に感謝
私は特に犬好きではないのですが、「シンプルな情熱」のレティシア・ドッシュの監督、主演なので鑑賞。
女性蔑視、障害、人種、職業差別、子供の虐待、SNS中傷、気候変動などカオス化するところは、現代の正義の多様化、リベラルの分断を意図的にあらわしていますね。やや詰め込み過ぎで疲れますが、現実もこんな感じで、うんざりしますものね。
全体的にコメディとしてはツボにハマらなかったし、ドッグトレーナーとの(フランス映画らしい)野生の絡みは不要ではと感じました。
監督が言う「人間は動物に不寛容」というのはその通りで、根底に「人間都合」があります。
パンダが見納めとなると殺到し、一方でクマが里に降りてくると即駆除。結局はパンダは政治の道具だし、クマは気候変動の犠牲者なのにね。
すみません、かく言う私も蚊やゴキブリは人間都合で即殺生してしまいますが。。
レティシアにはこれからも独創的な作品に出て、監督もしてほしいです。
これはフランスの映画です。
最初に、内容には一切触れずに、感想と、僕がこの映画をどういう目線で観たのかを書きます。
3月頃、SNSで少し話題になっていて気になっていた映画でした。
「動物は果たして“もの”なのか?」という問いが作品の中心テーマであり、実はシリアスな要素を根幹に持った映画です。ただこれは、犬好きのための“正義の映画”ではなく、もっと広く社会全体に向けた強いメッセージが感じられる作品でした。
とはいえ、映画自体にはコメディ的な表現があり、シリアスな空気感を吹き飛ばすほど、劇場内は笑いに包まれていました。
でも、それこそがこの映画の狙いなんだろうなと感じつつ、「本当は何を伝えたいんだろう?」と深読みしながら観ていると――実は、相当恐ろしい映画なのでは?と思えてきました。
この先はネタバレに踏み入りそうなので、簡潔な感想としてここで終わらせます。
楽しくも、ユーモアと笑いに満ちた映画でした。
でもね、皆さん。
この映画、“フランス”の映画ですよ。
コミカルに楽しませてくれる映画だけれど
面白くなりそうではあった、犬がただただかわいい。
フェミニズム映画
ぶっちゃけ犬の映画ではなかった。
フェミニズム映画。
主人公の弁護士のアヴリル、アヴリルの隣のDV母親、原告側の政界進出を狙う女性弁護士、噛まれたポルトガル移民女性……
全員自己中、かつ虐げられながら他者を責め、またどうにもならずにパニックに陥り、論理破綻とドツボにハマっていく女性だらけでイライラしますが、そういう理不尽さを題材にしたコメディ。
開始早々、主人公に対して、上司が自分の性生活を滔々と語るハラスメントマウント野郎なのを見せるし、DV被害の少年は主人公の夜の営み後の家に忍び込んで平然としてるし、という性に関してあっけらかんな作りに、「フランス映画だなぁ」と嫌なゲップが出ました。
犬の視点で言えば、救いのない話だし。
ただ、出演していたコスモス役のわんこはめっちゃ名優でしたね。
犬を見るだけのために行ってよかったとは思いました。
コスモスの大きな瞳が訴えたかったこと
よく纏まった良い作品
コディ(コスモス)がひたすら可愛いだけでなく本当に演技が上手い。
登場人物、エピソードに無駄がなくしっかり全体が繋がっていて最後まで違和感なく楽しめました。
所謂ドタバタ法廷コメディ的な映画かと思って見に行きましたがちょっと違いコメディ要素もうまく入った社会派作品という感じ。
どうしたら人間を好きになれるかという少年の問いに答える主人公の回答がとても印象に残りました。
それが作中終始一貫しているテーマに思われます。
しかしそのテーマや答えを押し付ける訳でなく、またご都合主義で用意されたエンディングでもなく見る人それぞれ考える余地を持たせる良い作品。
動物の出ている映画にありがちな御涙頂戴の演出がないところも好感が待てます。
全体のバランスや纏め方が素晴らしいです。
被告コスモス 独身 無職
実話にヒントを得たらしい。
必殺の上目遣い
全24件中、1~20件目を表示
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