「ケッサク、そして傑作。」犬の裁判 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)
ケッサク、そして傑作。
映画の舞台はスイスだが、
フランスの小さな町の出来事に基づいているという。
被告となった主人公ならぬ主犬公は、雑種の「コスモス」。
苗字なし、8歳、無職、男性。
演じたコディは、その表情豊かな演技で、ベネチア映画祭の
「パルム・ドール(最高賞)」ならぬ「パルム・ドッグ」を受賞。
初めから、次々笑わせにくる。
そして、ちゃんと次々笑える。
どうして犬が被告になったのか、というと、
「人を3回噛んだ犬は安楽死」という法律を回避するためには、
犬が飼い主の「所有物」ではない、と主張せざるを得ない、と考えた
敗訴してばかりの弁護士アヴリル(レティシア・ドッシュ。監督も)の作戦が
誤算で招いた結果だったんである。
(それを判事に認めさせようとする場面も、笑笑…)
他方、アヴリルの住む高層マンションの隣室には、
12歳の少年が両親と住んでいるんだが、
彼は親から虐待を受けていて、
どうやらアヴリルはそれを何とかしようとして逆に「接近禁止」命令を受けているらしい、
という状況もあり。
(ちなみにこの少年がまた、いい味出してる)
さらには、原告側の弁護人が、
政界進出して右翼政党を立ち上げ、
ポピュリズム街道邁進中の女性だったり。
現代のさまざまな問題もからめて
物語は進むんだけれど
――この後は、ネタバレなしには語れませぬが、結論を言えば、
「自然界における人間という存在」について
深い洞察と大きな啓示が与えられる傑作でありました。
そしてコスモス(コディ)が、
こよなく可愛かったのでありました。
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