「多少ノイズはあるが構成が良い。ただ…」ジュラシック・ワールド 復活の大地 くめいさんの映画レビュー(感想・評価)
多少ノイズはあるが構成が良い。ただ…
『ジュラシック』シリーズは最初のスピルバーグ監督作の『現代に恐竜がよみがえった!』というワクワク感が至高だった。人の手を離れてから『ワールド』となり、もはやジャンルとしてはパニック・ホラーに近いと思う。
今作は原題に『Rebirth』を銘打ち、『ここからでも観れるよ!』と主張しているように感じる。
さて内容だが、研究施設が放置され恐竜が自然化した地でDNAのサンプル採取がしたい主人公らと、偶然巻き込まれる旅行中の家族それぞれの視点で物語が進んでいく。片や装備とスキルのあるプロ集団が自分から恐竜を狙撃したり翼竜の巣にラペリングしたりと危地に赴きアクションし、何も持たない一般人の家族はなすすべなく逃げ回る。
死ぬのは専らプロ集団で、それは予想も付くのだがともかく『立ち向かう』と『逃げる』というシチュエーションの使い分けが巧み。恐怖やハラハラ感を楽しむ映画はダレないようそれらの質をテンポよく変えるか、『スクリーム』のように話の軸をスライドさせる必要があるが、この映画は最後まで緊張感を保っているように感じた。
途中の演出(例えばT-レックスが登場するシーン)などは非常に驚きつつジャンプスケアでなくハラハラが持続する絶妙なもので、スピルバーグらしい巧妙さを感じた。監督ではないにせよ、アイデアの何割かは担っているだろうと思う。
一方でキャラクターのドラマに関しては、なにやら主人公が母だとか戦友(?)を亡くしていたり、メインキャストのダンカンは離婚している風なことを話すが、事情を知っている人だけで断片的に話すので設定はあるのだろうけど活かされているようには感じない。おそらく人間側の深みを増す意図があると思うが、今作においてはそれほど意味のあるシーンではなかったと思う。恐竜の子供を連れ帰ったことといい、後の作品で何らかの伏線にするつもりかもしれないが、正直覚えていられるかは怪しい。
この映画最大の不満としては、襲う側として遺伝子操作をした架空の恐竜が出てくるところ。過去にもあったが今回は形状から大きく既存種と逸脱しており、コブダイみたいな顔をしたゴア・マガラ(分からない方はごめんなさい)なんかが出てくる。
最初に書いたように『恐竜と現代』という対比がワクワクするポイントだったのに、架空の恐竜はもはやただの怪獣じみていて『ジュラシック』の看板から片足を踏み外したような気がする。
『Rebirth』というのが既存の恐竜だけではなく架空の脅威も含めていくという話なら、他人の褌と思わざるを得ない。
総じて期待以上の面白さではあった。余談だが、マハーシャラ・アリは『グリーン・ブック』の印象が大きかったが今作ではムキムキすぎて笑ってしまった。
次回作を楽しみにしたい。
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