「かなり好きな作品」IT’S NOT ME イッツ・ノット・ミー Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
かなり好きな作品
カラックスと映画を彷徨う素晴らしい時間だった。
20世紀の男の全て。家族と父親、独裁者とマリリンモンロー。少年時代、寝室で聞いたナチスの恐怖。
カラックスがベッドでタバコに火をつけて、うつ伏せに横たわり何かをメモしている。主観や客観に分けられない思考やイメージのエンジンは、記憶と記憶になる前の夢に従属している。全ては寝室から。
夢の監督はあなた。
反復する日常的な記憶と、イマージュ化する記憶。独立した過去の姿である映画の中で、身体に埋め込まれたイマージュ…走る、踊る、重力とスピード…が、この世界を演じる。
そしてまばたき。私たちが見ているつもりで見ていないもの。見ていないつもりで見ているもの。
自分の歴史を理性ではなく意識として考えるなら、意識を生み出す時空(寝室)と、時空を生み出す意識(カメラ)があっていい。両方を闊歩するメルド。安らかに眠ったりするもんか。
魂のないはずの人形ベイビーアネットが、黒子によって躍動する。いやまじで最高のラストだった。
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