「何度も観たい走馬灯」IT’S NOT ME イッツ・ノット・ミー momoさんの映画レビュー(感想・評価)
何度も観たい走馬灯
一瞬、カラックスが死ぬ前に観る走馬灯はこんな感じか?と思って、ふと我に返る。いやいやまだ死んでもらっては困る。老人になる前に走馬灯の予行演習をしておくのも悪くない。
カラックスも歳をとり娘という守るべき存在もできたし、ここらで今までの作品を思い出しながら頭の中の映像を振り返るのもいいだろう。
走る娘がサメに襲われてパパが助けてくれないという妄想、想像に対して、娘の頭ののイマジネーションに対しては娘が監督だという。
そうか!誰もが監督になり得るんだと気付かされる。
世界を見つめる目がカメラだ。撮影監督も、映画監督も自分だ。
ありとあらゆる情報が入ってくる時代、瞬きする暇もない映像がたれ流されている。
失明しないためにはまばたきの回数が大事だ。
この映画はまばたきだったのか!なるほど!
まばたきして見えるサブリミナルの中の1秒のリンゴをみんなで共有しよう。
わたしも10代の多感な時期にカラックスの映像と出会い、とんがったり悩んだり。ドニ・ラヴァンやジュリエット・ビノシュと一緒に疾走してきたよな。
ここらでまばたきが必要なんだ。
一瞬、過去と今をコラージュさせながら振り返ろう。
デヴィッド・ボウイのこともちゃんと忘れないぞ!いつまでもその音楽とともに、まだまだ走らないと。
これからも時々まばたきは必要だ。
映画館で観て、みんなでリンゴを共有するのも素敵だが、所有したくなる映画だ。
リビングで酒飲みながらぼーっと観るのが最高。リビングで垂れ流して友達と眺めるにも素敵な額縁となる。
この映画のような走馬灯を観ながら私もいつか死んでいくのかもしれない。
できるだけ素敵な走馬灯が現れるようにこの先の人生と世界を充実させていかねばならない。
いやー。とにかくいいものを観た。
みんな!いい夢みろよ。あばよ!
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