アヌジャのレビュー・感想・評価
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本編も、本編後の映像も、どちらも心打たれる一作
2025年の第97回アカデミー賞短編実写部門のノミネート作品である本作。残念ながら受賞は逃しましたが(『I'm Not a Robot』が受賞)、ホリーショート映画祭など複数の映画祭で高い評価を受けています。
ヒンディー語の作品で、アヌジャを演じるサジダ・パタンをはじめ出演している俳優はみなインド系だけれども、監督アダム・J・グレイブスは米国出身で、本作の製作も米国となっています(配給はNetflix)。
孤児でありながら貧困状況から抜け出すために工場労働で生計を立てているアヌジャとパラク(アナニャ・シャンパグ)の姉妹が本作の主人公で、大人たちがアヌジャの知的才能に気づいてから、彼女たちの状況は大きく変化していく…という展開です。
もちろん健気でありながら明るく生きる子供たちの姿が印象的なのですが、それ以上に彼女らを使役する大人たちが作り出した強固な搾取構造のえげつなさは衝撃的です。
しかもそれらを真正面から告発するのではなく、あくまでもアヌジャの視点から大人たちの言動を捉えているため、彼らが一見、「貧しいアヌジャに手を差し伸べる優しい大人たち」に見えてしまうのが何とも…。
約22分間の物語は、実時間以上の濃厚さを感じさせます。短編映画のみ手掛けてきたグレイブス監督が、しかも三作目でここまで見事な作品を作り上げたことは驚き。
なお本作には、作中と同様孤児として育てられた少年少女が多数出演しており、本編終了後に彼らがこの映画を観て笑ったり感動している様子を収めた映像を鑑賞することができます。この映像もまた、本編と同じくらい、心打たれるものがあります…。
児童労働
小さな大事件
見ないふりしてませんか、
と言われている気がした。
世界中の大きな問題が、
日々ニュースであふれている。
そんな中、
ニュースにならない、
小さいけど大事な事を、
観客に突きつける作品。
突出した才能を発揮する子ども、
「型破りな教室」はメキシコ、
「スラムドッグ・ミリオネア」は同じインド。
EDロールで、
子どもたちの鑑賞会、
400ルピー、40ルピー、
ケタが違うことに、みんなが笑っていたのか、
それとも、
同じような経験があるからなのか、
または、
それ以外の理由か。
その前のアヌジャの選択、
彼女自身の成長と自己理解の過程、
姉への共感を象徴するシーンだ。
鑑賞会の子どもたちは、
どう解釈したのだろう、
また、
同じ状況なら、
どちらを選んだのだろうか。
こっちを選ぶ人!
はーい!
あっちを選ぶ人!
はーーい!
鑑賞修了後に、
みんなで手を挙げて、
私ならこっち、
僕ならあっち・・・
やっていたのかもしれない。
観客自身も社会的背景、
自分の価値観や判断基準、
共感ポイントについて問い直すことになるだろう。
冒頭の話と本編はリンクしている
貧困と搾取
教育に生活レベルの差があってはならない。
とは言うものの、大小はあろうが万国共通でこの問題はある。
インドの最下層であろう少女二人が生きてゆくための労働を強いられている現状。
その中で賢く優しくしたたかに野心を持ち生きる美しい瞳が印象に残りました。
作中に平凡な自分は現状のままでいいというようなセリフが出てくる。絶対にそれは正しくないと言える声を持つ私たちは怒りを覚えるが、メディアもなく、教育も受けられ女性たちはその事を知る由もないのだ。
不衛生な貧困生活の中でも、姉妹なかよくにこにこと笑いながら優しい楽しい時間が過ぎてゆくシーンもあり重すぎる印象は残りませんでした。
経済の発展が目覚ましいインドは文化的にも民族的にも色々と難しいのであろうが、水が染み渡るように潤うことを祈ります。
貧困層の子どもたちの児童労働と搾取の問題を取り扱った短編「アヌジャ...
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