配信開始日 2025年2月5日

「本編も、本編後の映像も、どちらも心打たれる一作」アヌジャ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 本編も、本編後の映像も、どちらも心打たれる一作

2025年10月9日
PCから投稿

2025年の第97回アカデミー賞短編実写部門のノミネート作品である本作。残念ながら受賞は逃しましたが(『I'm Not a Robot』が受賞)、ホリーショート映画祭など複数の映画祭で高い評価を受けています。

ヒンディー語の作品で、アヌジャを演じるサジダ・パタンをはじめ出演している俳優はみなインド系だけれども、監督アダム・J・グレイブスは米国出身で、本作の製作も米国となっています(配給はNetflix)。

孤児でありながら貧困状況から抜け出すために工場労働で生計を立てているアヌジャとパラク(アナニャ・シャンパグ)の姉妹が本作の主人公で、大人たちがアヌジャの知的才能に気づいてから、彼女たちの状況は大きく変化していく…という展開です。

もちろん健気でありながら明るく生きる子供たちの姿が印象的なのですが、それ以上に彼女らを使役する大人たちが作り出した強固な搾取構造のえげつなさは衝撃的です。

しかもそれらを真正面から告発するのではなく、あくまでもアヌジャの視点から大人たちの言動を捉えているため、彼らが一見、「貧しいアヌジャに手を差し伸べる優しい大人たち」に見えてしまうのが何とも…。

約22分間の物語は、実時間以上の濃厚さを感じさせます。短編映画のみ手掛けてきたグレイブス監督が、しかも三作目でここまで見事な作品を作り上げたことは驚き。

なお本作には、作中と同様孤児として育てられた少年少女が多数出演しており、本編終了後に彼らがこの映画を観て笑ったり感動している様子を収めた映像を鑑賞することができます。この映像もまた、本編と同じくらい、心打たれるものがあります…。

yui