「神と悪の啓示」啓示 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
神と悪の啓示
『新感染』で知られるヨン・サンホ監督だが、『我は神なり』など信仰と恐怖を絡めた作品も印象的。
そんな監督が常々描くのは、人の善悪。
信仰、恐怖、人の善悪…その3つを題材に、またまた放つKOサスペンス。
小さな教会で牧師を務めるミンチャンは悩みの種が尽きない。
信徒数は減り、近くに大きな教会が新設されるが、自分がそこの主任牧師を任される訳ではないようだ。さらに、妻の浮気。
主よ。私はこんなにもあなたに尽くしているのに、私は報われないのですか…? 主よ。どうか啓示を…!
教会に一人の男が。半ば強引に信徒にするが、ある事件を起こしたレイプ犯だった。
折しも二人の少女が行方不明に。一人は教会の信徒、もう一人はミンチャンの娘。
その男クォンを疑い、後を追う。気付かれ、山中で揉み合いとなり、クォンは崖から落下。
動揺するミンチャンだが、その時稲光に照らされた岩肌が神のように見え…。
これは啓示。罪悪人を罰せよ、と…。
娘は友達の家に遊びに行き無事が分かったが、もう一人の少女の行方は…。
警察が捜査。
この町の署に配属されたばかりのヨニ。ある事件で悲しい過去を抱えていた。
ミンチャンの通報もあり、捜査線上にクォンが浮上。ヨニは動揺する。
クォンが起こした事件。一人の女性を拉致し、暴行。その女性の姉がヨニだった。
やがてクォンは逮捕。裁判が開かれるが、親から虐待を受けていたクォンの凄惨な過去が判明。精神科医の有利な証言もあって、一転クォンに同情的に。
罪には問われたが、望んだほどの重い罪にはならず。ショックを受けたヨニの妹は自殺…。
今尚妹を助けられなかった事、力になれなかった事を後悔するヨニ。幻影で妹の姿を見るほど。
憎きクォンが出所。配属された町で、再び奴が容疑者として浮上した事件と巡り合う。
今度こそ…!
山中で乗り捨てられたクォンの車を発見するが、クォンは見つからない。何処に…?
クォンの車の発見の報せを受け、行方不明の少女の母親と付き添いのミンチャンも現場に。
この時のミンチャンの言動をヨニは不審がる…。
貧乏くじばかり引いていたミンチャンだが、事態が好転。
新しい教会の主任牧師に選ばれる。妻からも告解。
クォンの件でも疑われていないようだ。(ヨニが怪しんでいる事は知らない)
主は私をお見捨てにはならなかったようだ。
例の山中近くの老人ホームに招かれる。
そこに山中から這いずり出てきたような重傷の男が保護されているという。
あの男だ…! 生きていたのだ…!
こっそり病室に忍び込む。
やはりあの男。もし、証言でもされたら…。
再び稲光。窓の外の雲が、彼には“神”に見えた。
我々から見ればそれは神と対極の存在にしか見えない。
もはや自分が信ずる者や善悪の境すら分からなくなってきている。
そしてミンチャンには再びそれが啓示に聞こえたのだ。罪悪人を罰せよ、と…。
クォンを施設から連れ出す。偶然見つけた廃屋に監禁、拷問。
神が望んでおられるのだ。罪深きあなたの死を。
罪深いのはどっちだ…?
捜査を続けるヨニ。ミンチャンへの不審を強め、ミンチャンの車のタイヤに付着していた泥や物質から、廃屋の場所を特定する。
監禁されていたクォンを発見。
ヨニにも決断の時。刑事としてクォンを助け、捕まえ、罰すか。今この場で、この手で罰すか。
妹の幻影も叫ぶ。殺して!
激しく揺れ、葛藤するユニ。彼女が選んだのは…
それが早いか遅いか、ミンチャンが現れる。不意打ちでユニを拘束。
二人は拘束され、一人は優位な位置。極限状況下に置かれ…。
罪悪人クォンを殺す事は神の啓示。御心。私がその役目を主から頂き給った。
それに反するヨニ。まだ少女が一人行方不明。クォンを殺せば少女の行方が分からなくなる。
少女はもう死んでいる、とミンチャン。
この状況に発狂したように笑うクォン。
事件への関与をうやむやにしてきたが、ここに来てはっきりと罪を認める。少女の行方を知るのは自分だけ、と威圧する。
さらにヨニの事も思い出し、妹の事件についても挑発。
怒り絶叫するヨニ、悪魔のような本性を表したクォン、迷える子羊たちを導かんとするミンチャン。
もつれた状況は一瞬の隙を付き…。
この窮地を脱したヨニ。刑事として人として、クォンを助けようとしたが、クォンは死亡。ミンチャンは逮捕。
少女の行方は分からぬまま…。
何か手掛かりは無いのか。クォンの言動などに。
出所してから大人しかったクォン。彼がまた罪を犯したきっかけは…?
クォンの部屋に書かれた謎の絵。拘束されていた時言っていた“一つ目”とは…?
クォンの幼少時の写真の中に、“一つ目”と思われる正体が…。
この町に来て、それを見かけた。それが彼をまた犯罪に突き動かすきっかけに…。
“一つ目”に異常に執着するクォン。きっとそこに、少女が…。
この町に、“一つ目”と同じ“建物”は…?
Googleを駆使して見つけ出すが、最大のヒントになったのは父親から送られてきた写真。序盤の他愛ない会話がまさかここで…!
巧みな伏線と言うより、作品的に言えば、神の思し召し。
少女は無事保護。事件は解決。
ヨニはその事を獄中のミンチャンに伝えるが、心ここに在らず。未だ啓示を信じきっている。
精神科医によると、極度の精神病。何気ないものが信仰の対象に見え、あたかも啓示を受けたかのように思い込む。
彼は神に毒されたのか、悪魔に弄ばれたのか。
獄中で、壁の汚れを消そうとするミンチャン。
それがまた見えてくる。
私をお見捨てにならなかったのだ。
悪の啓示。