フランケンシュタインのレビュー・感想・評価
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これほど胸を揺さぶる作品に仕上がるとは
奇才ギレルモ・デル・トロを幼少期から魅了し続けた「フランケンシュタイン」の物語が、ついに自身の手により予想を超えて美しく、胸を打つ大作として生まれ変わった。独自の解釈や脚色はあるものの、ストーリー構造的にこれほどメアリー・シェリーの原作に近いものはかつてなかったかもしれない。2世代にまたがり繰り返される父子の確執と衝突。あるいは狂気的なまでの創造の希求によって引き起こされる終わりなき絶望。主軸を成すアイザック&エロルディの壮絶なやりとりからも目が離せないが、言語と知性を培ったクリーチャーが自らストーリーを語り始めるときの深淵さたるや計り知れない。なおかつ、そこで一人の老人によってもたらされる愛情や「赦しと忘却」というテーマには、ゴシックホラーの範疇にとどまらない崇高さを覚える。AI時代の写し鏡として、そして数々のクリーチャーの創造を経てきたデル・トロ自身に重なる物語としても興味は尽きない。
クリーチャーを介して描かれる人間が人間である理由
ギレルモ・デル・トロが25年間温めてきたというモンスター映画のマスターピースに対する彼なりの"愛の讃歌"は、パート毎に分かれて描かれる。第一章は、幼くして母親を亡くしたフランケンシュタイン博士(オスカー・アイザック)が、死を免れる手段として恐るべき再生機能を持ったクリーチャー(ジェイコブ・エロルディ)を創り上げる過程だ。冒頭から炸裂する濃厚な映像と耳をつんざくような音響を使って描かれるこの前半で、早くもデル・トロのマジックにかかって痺れまくる観客は多いことだろう。
しかし、個人的な印象では、物語が一気に深みと憂いを帯びてくるのは、クリーチャー目線でことの次第が語られる第二章だ。作ってくれと頼んだわけでもないのに、不死身の体が欲しいと言ったわけでもないのに、そんな自分をこの世に誕生させた博士に対するクリーチャーが抱く計り知れない孤独は、観る者の心を射抜いて一層画面から目が離せなくなる。クリーチャーを演じるエロルディの悲哀に満ちた演技は、当初は別の俳優が演じる予定だったことなど忘れさせる。目の表情といい、体型といい、この役には彼以外考えられないのだ。
やがて、クリーチャーが葛藤に果てに"人間とは何か"を学びとるクライマックスは、デル・トロの今の世界に対する切なる願いが込められていて、思わず胸が熱くなってしまった。人間が人間である理由。それは怒りのその先にある感情なのだと、教えてくれるのだ。
怪物は誰か?
狂気と犠牲と孤独、そして愛の物語‼️
多分、今回のデル・トロ監督版がメアリー・シェリー女史の原作に一番近いんじゃないでしょうか⁉️ピーター・ジャクソンが「キング・コング」を作りたかったのと同じように、ギレルモ・デル・トロにとっても「フランケンシュタイン」は念願の企画だったと思います‼️ビクター・フランケンシュタインにしろ、そのフランケンシュタインが創造した怪物にしろ、ここまでキャラ描写、そして感情が表現された事は今までなかったハズ‼️ジェームズ・ホエール版でさえも‼️ただおなじみフランケンシュタインと、その怪物の物語も、深ーい物語ではありますが、決して何回も楽しめるモノではないので、150分かけて語られると体力をかなり消耗しますね‼️そしてツギハギだらけの怪力モンスターなので、その創造の過程や、暴れるシーンがグロかったりして生々しいのもやや減点‼️そして私にとってフランケンシュタインの怪物はボリス・カーロフであり、世間のイメージもボリス・カーロフが作り上げていると思うので、もうちょっとオマージュして欲しかった‼️今回のジェイコブ・エロルディはハンサムすぎます‼️しかしラスト、ビクターと怪物が和解し、父と息子になる展開は救いがあって素晴らしかったと思います‼️未読だけど原作はどうなんだろう⁉️
ちなみに私が考える最高のフランケンシュタイン映画はメル・ブルックス監督の「ヤング・フランケンシュタイン」です‼️ホントに大好き‼️
ヴィクターのとんでもないクズっぷり
映像作りには見応えあり
感情の結末だけを提示する物語は、なぜ深みに届かないのか
映像は驚くほど美しく、撮影・美術・照明のクオリティは高い。しかし、その完成度に釣り合うだけの内容・演出・構成が用意されていない。
物語は浅く、キャラクターの心の変化に伴う因果の積み上げが感じられず、展開にも整合性が欠ける。何故いまその行動に至るのか、直前の描写は何の意味があったのかという疑問が何度も残る。
本作が描こうとしているキャラクター像や物語の方向性自体は理解できる。しかし、それを“演出で観客に気づかせる”のではなく、役者の表情やセリフで露骨に説明してしまうため、受け手が感情を掬い取る余白がない。
さらに、善と悪、正しさと過ちをあまりにも明確に提示しすぎており、その根拠となる心理描写や積み上げが伴っていない。結果として、情緒の深みが生まれていない。
加えて、本作が伝えたいメッセージや展開が平凡であったこと自体は問題ではない。平凡なテーマであっても、演出と構成次第でいくらでも魅力的に昇華できるし、むしろその「見せ方」に映画の力量が表れる。しかし本作は、そこを掘り下げる前に感情の結論だけを急いで提示してしまった印象が強い。
視覚的な美しさとは裏腹に、物語の厚みを生むための“積み重ね”が欠けている。
総じて、映像面は非常に洗練されている一方、内容面では極めて粗く平板に感じた。
本作を観れば、私が何を指して「駄作」と言っているのかは理解してもらえると思う。
残念。例によって納得感無く、不完全燃焼の「ネトフリ病」。観たいだろうが高い金払ってまで観なくても良い映画。後半はしょり過ぎ。まとめが雑。クライマックス無し。カタルシス無し。
あの〜、前から思ってたんだけど、「ネットフィリクス」って(アマゾンもそうだが。特にネットフィリックスは確実にこうなる)つかみから中盤までは良いけど、クライマックスのフェーズになると首題のとおり急にはしょりがすぎるよねぇ。
あれなんなんだよなぁ。必ずだよなぁ。会社が「斬れ!・斬れ!」って云ってんだろ。
なんなんだろうねぇ。
折角、視聴者が中盤までノってるところで急に水刺されちゃうから一挙にシラけるよなぁ。
だから、ネトフリの映画館未公開版はなるべく見ないようにしているんだが、今回は流石にそんなことにならないと思って観ちゃったんだが・・・。
前半は実に丁寧に作っていて、出てくる女の子もチョイ役だと勘違いするくらいの不細工でアニメ好きを寄せ付けないで良い感じだが、後半は、描くべき場面をカットするもんだから結局、失速していつも通り。ラスト船に上がる場面くらいは描けばよかったんだよ。
「イクサガミ」みたいに日本の主役俳優の首をバッサバッサと実に贅沢に切りまくる金があって、家で見せるための映画なんだから3時間超えにすれば良いのに変なところでケチってるのはどういう意味かね。長いと客が逃げるっていうなら、「休憩」入れれば良いじゃんよ。
あれか?円安で日本モノは安く作れるから贅沢に作れるってか?
それはそれで、舐められてんじゃん。日本映画。ヤベェじゃん。ど〜すんのよ。
どうでも良いけど。
でも、どうも不可解だよなぁ。既存スタジオ会社の「斬れ!」に対抗して作った部類の会社なんじゃ無いのかね。作品にとっては「不健全」な方向の会社じゃ無いのか?
ラストの船長室の場面の会話も尺が短過ぎて説得性に欠け、観ている方の納得感は無い。
これは、ある意味、「病気」です。
かなりの大金かけてラストのカットをケチるのかよ。
「デルトロ」も良くこのカットで出したよなぁ。
ということで、WBCに興味無いけどこの映画目当て(いないだろうが)で加入しようかと思っているならやめておくことをお勧めします。
野球に¥350億出して日本のファンに迷惑かけるんだからよ。映画くらい「ちゃんとやろうぜ。」
「フランケンシュタイン」はドンキでもハロウィンの時期にお面が売って...
「フランケンシュタイン」はドンキでもハロウィンの時期にお面が売っているが、実際に原作を読んでいる人々はいくら居るのだろうと考えた事がある。小学生の時に原作を読み、何と哀しい物語なんだと思ったが、正直細かなストーリーは覚えていない。
ただ、改めて思った。人間と怪物はどちらが本当にバケモノなんだと言う事だ。冒頭の怪物による襲撃シーンは確かにバケモノであると誰もが認識するだろうが、彼の心は繊細で、純粋なのである。
主人公のヴィクターがもう少し怪物に対して対等に接していたら、彼は物凄く穏やかで中立的な立場の存在になっていたはずだ。その証拠に、あそこまでされても粗暴な事はせずに、素直に過ちを認めたヴィクターを許したのだから。ヴィクター自身は研究による名声の為に怪物を作り出し、死んだ人間も放っておいて研究に没頭していたのだから、どちらがバケモノなんだと言いたくなる。
2時間半の本編で、登場人物らが過去何があったのかを船の船長に話すと言う所から第1章、第2章となっていくのだが、幼少期のヴィクターも丁寧に描き、いかにして天才でありながらマッドサイエンティストになったのかが描かれる。怪物の章では、ヴィクターと別れた後に人間の心優しさや、残酷さ、自然の摂理として相手動物を喰らうという、「怒りという感情以外の暴力や殺害」という事も学ぶ。アダムとイヴから始まる「人間の誕生」から、自分は何者なんだという自問自答になり、自分が"無"から生まれた怪物であるという事を知って愕然とする。本作を"ホラー映画"として観ると全く違う印象になるはずだ。時折ヴィクターの脚が千切れかかる程負傷したり、人の顎を引きちぎるシーンとかもあり、若干過激な表現もあるものの、ホラーという世界で人間の愚かさ、生命、などにまつわる社会的なテーマがあるという事を忘れてはいけない。
不死身という事から、一生を孤独で過ごしたく無いという人間の様な感情の下、ミア・ゴス演じるエリザベスとの出会いから、恋心を抱くまで、とても丁寧に描いている。
研究のシーンなどはまさにギレルモ・デル・トロ監督の世界観そのままであり、より不気味さが際立つ演出になっている。あのカラフルでハイテクなのかローテクなのか分からない微妙なデザインの機器類など、過去作でも観たデル・トロワールド炸裂である。彼の作品は毎度観るたびに映画オタクが作った映画なんだと思うが、特に本作は色濃く出ており、それが世界観を邪魔する事なくむしろよりどっぷり浸かれるくらいの印象だ。個人的には「シェイプ・オブ・ウォーター」よりも感情移入出来た気がする。
鑑賞後にデル・トロ作品を無性に観たくなるのだが、しばらく余韻が残りそうである。
道徳心なさが得られるもの
哲学的で重厚な作品の多いデル・トロ監督ですが、初期の魔物のヒーロー「ヘルボーイ」が好きで、ヴィクターが生み出した怪物も“頑丈な肉体と怪力”が特徴、2作品は似通ってると感じNetflixで視聴。
物語は2つの視点で進行。特に怪物は外の世界では偏見の目に晒されますが、盲目の老人に出会い言葉を教わり知性と感情を与えられ同時に創造主への憎しみを知る。
決して悪くはないが私が期待していたものと違いました。美術や造形美など感嘆とさせる拘りがあるものの、粘着質なストーリーや彼を取り巻く不可侵な登場人物に感情移入出来なかった。
何より主人公であるヴィクターの道徳心の無さに呆れてしまい、御遺体を自分の欲のためにモノとして扱う所業に不快感で溢れた。彼の弟ウィリアムと同じ感情がこびり付いて後味が悪い。
他の方の高評価レビューが多いですが、好き嫌いが分かれる作品かと。
名もなき者
原作はあまりにも有名だが、読んだ事がない。
11月4日(火)
「ハウス・オブ・ダイナマイト」に続くNetflix配信前劇場公開、同じくキャパ333のシネマート新宿で「フランケンシュタイン」を。
私が一番気になったのはカメラの動きである。FIXする事なく絶えず動いている。あまりカメラが動くと画が落ち着かなくなるのだが、編集の上手さもあり全く気にならない。というか、動いている事も判らないくらいだ。色合いも良く、カメラはこの作品を支える大きな要素である。
Netflixでこれからご覧になる方はカメラの動きに注目して頂きたい。
(映画秘宝のライターである友人SにNetflix視聴時に確認してもらったら、カメラがFIXしたのは1箇所だけだったとの事だ)
ビクターが溺愛する母親は、真っ赤な衣装で登場するが医者の父親の治療の甲斐なく亡くなる。医者として父親から厳しく仕込まれたビクターは生命に強い関心を持つ。赤い衣装は血の象徴か。
弟の婚約者エリザベス(ミア・ゴス)は青い衣装で登場し、緑の衣装から赤い衣装になり最後は真っ白なウェディングドレスを赤く染めるのである。
クリーチャーからもらった黄色の枯葉を大事に取ってあるエリザベス。
本作は色の対比もまた見事である。
クリーチャーは、不老不死になった自分を作った事に対して怒るのではなく、フランケンシュタインが自分と同様の不死不死の伴侶を作ってくれない事に怒るのである。これから終わりのない果てしない時間を一人で生きて行かなければならないのだ。
人は皆一人では生きて行けないものだから。
最後は父親たるビクター・フランケンシュタインに対する「罪の赦し」で終わる。
一つ納得がいかないのは、クリーチャーは盲目の老人から言葉は学べても文字を読む術は学べないのではないかという事。
これだけ有名なフランケンシュタインだが、原作をちゃんと読んだ事がない。新宿紀伊國屋書店で原作文庫版を購入した。原作読了後、何かあれば追記したいと思う。
(読んでからレビューを上げようと思ったのだが、まだ未読です)
造形美が素晴らしい!一方で改変が気になる・・・
本作では、造形美や世界観のルックがとても魅力的で、まずそこに心を掴まれました。
継ぎ接ぎだらけでありながら、均整の取れた美しさを備えた怪物の肉体。その制作過程で描かれる臓器や四肢の精巧なディテールも見事で、さすがギレルモ・デル・トロ監督の手腕だと頷けます。
当時の街並みを丁寧に再現した美術、そして夕暮れの光に照らされる赤を基調とした死体実験室――死から生命を生み出すというアンビバレントなテーマと呼応する、生と死の美しさが共存したセットも印象的でした。
一方で、原作からの大きな改変はどうしても気になりました。
原作では、ヴィクターは真面目な青年として描かれ、嫉妬と孤独に狂った怪物が彼を追い詰めていきます。ヴィクターにとって怪物は“悪夢の具現”であり、二人は決して和解せず、虚しい結末を迎える――そこが作品の肝だと思っています。
しかし映画版では、ヴィクターも“怪物”として描かれ、性格が逆転。物語は互いに許し合うという優しい着地を迎えます。この改変自体が悪いとは言いませんが、原作と比べるとどうしても甘さが際立ちました。また、ヴィクター・エリザベス・怪物といった彼らのキャラクター性の大幅な変更も受け入れにくく感じました。
さらに、映画版ではお互いを“家族”として認め合う方向に向かうのに、ヴィクターが怪物に名前を与えない点も気になりました。そこを踏み切ることで、より深い物語になったのではないかと感じます。
中盤までは非常に惹きつけられたのですが、それ以降は物語に入り込みづらくなり、総評としては「良い点が多いが、手放しで絶賛には至らない」という印象です。
とはいえ、映画としての完成度は高く、モンスター映画の美学を現代映像で見事に再構築していたことは間違いありません。可能であれば、吸血鬼など他のゴシックホラー作品も、この美術力で実写化してほしいと思うほどです。
超人?
「パンズ・ラビリンス」、「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロ監督が、あの有名な「フランケンシュタイン」を映画化するとなれば是が非でも観なくては!
まさにギレルモ・デル・トロ監督にピッタリな題材です。
Netflix配信映画で一部劇場公開となると県外まで出向いてのようやく鑑賞ができました、が⋯。
確かにギレルモ・デル・トロ監督が得意とする演出で期待通りでしたが、本作のキモとなる怪物の造形に違和感が残ってしまいました。
とくに怪物から髪の毛が生えてきた当たりから怪物には見えなくなったり、ダイナマイトで吹き飛ばされても五体満足だったり、船を持ち上げるほどの超人の並の腕力だったりともはや創り生まれた怪物ではなく別物です。
その辺りから感情移入は出来なくなり退屈になってしまいました。
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