ジェリーの災難のレビュー・感想・評価
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ひとりきりの客席で思わず拍手した映画
実在の一般人ジェリーさんが、奇妙ないきがかりで潜入捜査の片棒を担ぐことになった実話を、本人の主演(共同脚本も)で映画化!
とはいえ始まってほどなくして、ほとんどの人は典型的な劇場型詐欺の話だとわかるはずで、面白いっちゃ面白いんだけど、独居老人が騙されていく姿を見ているのはツライっちゃツライ。
と思っていたら、この映画の本質は詐欺事件の再現ではなく、その先にあったことだと明かされる終盤で、いきなり見ていた景色がガラリを変わってすべてが鮮やかに色づく。「映画に救われた」みたいな文句は字面がキレイなだけで胡散臭いことが多いとヒネクレたことを思って生きてきたが、これは本当に「映画に救われた話」。しかも救われるのは映画内の物語だけでない。現実のジェリーもその家族も、そしてわれわれ観客までもが救われる。どれだけ奇跡的な映画なのか! あまりにもハッピーで美しいメタ構造の大成功作だと思う。
あと、ジェリーが「カネがないなら働こう」とUber Eats的なバイトを始める場面では、劇場に自分以外客がいなかったんで思わず拍手してしまった。この映画の救いは、ジェリーという爺さんのキャラクターにもあるんだよな。
お年寄りを騙すなんて、許せない。
日本での特殊詐欺の被害額は、2024年度で約450億円。とんでもない数字だ、とくにお年寄りの被害が深刻だと、この映画を見ているとしみじみと思ってしまう。いつの時代もなくならないであろう詐欺、自分だけは大丈夫だと思わず、一人だけで大きな決断をしないことだ。
オレオレ詐欺はなくならない
相手が誰であれ、この手の詐欺はなくならない。
いつの時代も、手を変え品を替え。
自分は大丈夫なんて思っても。
一度、ターゲットにされたら。
なにせ相手は、その手のプロ。
こちらの気持ちに油断がある頃をどこかで、見ているかのように、仕掛けてくる。
だけど、許せないよね。
実際に、詐欺にかかりすべての財産を失った老人。
そんな本人が作った作品だから、なおさら痛々しい。
台湾からアメリカに渡り、それなりに成功して。
離婚はしたものの、悠々自適な老後。
のはずだったんだけど。
自分は大丈夫だと思っていても。
スマホを使った、オレオレに見事に騙されてしまう。
特に、ある程度の年齢になり、軽度でも認知症になってしまうと。
どうしても、判断が鈍くなる。
私は、スマホもネットもやらないから大丈夫だとも言えない。
突然訪問されて、警察だなんだと、役柄を決めた劇場型詐欺もあるし。
電話をかけてくる相手も、割のいいバイトと思ったら、抜け出せなくなり。
そんな、ニュースもよく耳にする。
だけど、許せない。
アメリカでの生活が叶わなくなり。
さみしげに故郷台湾に帰国する主人公が、痛々しい。
だけど、めげずによく自ら主演して映画にしたものだと、感心してしまう。
どうか、この老人の余生が、静かに送れますよう願うばかりだ。
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