「ひとりきりの客席で思わず拍手した映画」ジェリーの災難 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
ひとりきりの客席で思わず拍手した映画
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実在の一般人ジェリーさんが、奇妙ないきがかりで潜入捜査の片棒を担ぐことになった実話を、本人の主演(共同脚本も)で映画化!
とはいえ始まってほどなくして、ほとんどの人は典型的な劇場型詐欺の話だとわかるはずで、面白いっちゃ面白いんだけど、独居老人が騙されていく姿を見ているのはツライっちゃツライ。
と思っていたら、この映画の本質は詐欺事件の再現ではなく、その先にあったことだと明かされる終盤で、いきなり見ていた景色がガラリを変わってすべてが鮮やかに色づく。「映画に救われた」みたいな文句は字面がキレイなだけで胡散臭いことが多いとヒネクレたことを思って生きてきたが、これは本当に「映画に救われた話」。しかも救われるのは映画内の物語だけでない。現実のジェリーもその家族も、そしてわれわれ観客までもが救われる。どれだけ奇跡的な映画なのか! あまりにもハッピーで美しいメタ構造の大成功作だと思う。
あと、ジェリーが「カネがないなら働こう」とUber Eats的なバイトを始める場面では、劇場に自分以外客がいなかったんで思わず拍手してしまった。この映画の救いは、ジェリーという爺さんのキャラクターにもあるんだよな。
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