「京都、恐ろしいところ!」ぶぶ漬けどうどす おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
京都、恐ろしいところ!
予告は目にしませんでしたが、時間があったので深川麻衣さん目当てで公開2日目に鑑賞してきました。客入りはイマイチでしたが、場内では時折笑い声が聞こえる、楽しい作品でした。
ストーリーは、京都の老舗扇子店の一人息子と結婚して東京で暮らすフリーライター・澁澤まどかが、老舗の暮らしぶりをコミックエッセイにしようと、夫の実家を訪れ、義父母や他店の女将さんたちを取材する中で、「本音と建前」を見分けられずに女将さんたちの反感を買ってしまうが、それさえもネタとして情報発信しながら、しだいに京都の正しい在り方を伝えることにのめり込んでいくというもの。
京都の方の言うことは言葉通りに受け取ってはダメということは、テレビで見たことがあります。でも、観光で訪れた程度ではそれに気づかず、実際に暮らしてみないと実感することはないでしょう。本作はそんな京都人のわかりにくい文化をわかりやすく描くという、その着眼点がおもしろいです。
しかも、それを劇中で次々とコミックエッセイに仕立てていく発想も秀逸です。エピソードからコミックエッセイという流れの繰り返しが楽しく、コミック自体も味わいのあるタッチで絶妙なおもしろさを醸しだしています。それを、無遠慮に突き進むまどかが少しずつ京都に染まる姿と絡めて描いているのも悪くないです。
ただ、本来ならその相乗効果でもっとコメディ路線で加速してほしかったのですが、今ひとつギアが上がりきらなかった印象なのがもったいないです。夫の浮気、その相手がコミックエッセイのパートナー、変わり者の大学教授の応援など、メインストーリーに対して関わりの薄い要素が邪魔をしていたようにも感じます。
そのあたりを排して、一枚岩を装う女将たち、お花の師匠、義父母などの「本音と建前」にもっとフィーチャーしてほしかったです。京都に暮らす人の中には表に出さない本音が山のようにあり、それが漏れ出ることから起こるトラブルをおもしろおかしく描いてほしかったです。そして、よそさんが勝手に作り上げたイメージで語られる京都、そのイメージに縛られながら暮らす京都の人々の隠された本音。そのギャップをもっと鮮やかに笑い飛ばしてほしかったです。
それにしても、京都人の「本音と建前」、さらに言えば「建前」の中に潜む嘘と謙遜とリップサービス、これを見分けることのなんと難しいことか!京都、恐ろしいところ!
主演は深川麻衣さんで、暴走するまどかを好演しています。京都人でなくても彼女の言動はちょっと鬱陶しいかもです。脇を固めるのは、室井滋さん、小野寺ずるさん、片岡礼子さん、大友律さん、若葉竜也さん、松尾貴史さん、豊原功補さんら。
共感ありがとうございます。
おっしゃる通り、浮気ネタなんか要らないから、もっとたくさん京言葉の建前の中に潜む本音を紹介して欲しかったです。
京都に限らず関西弁の奥深さに慣れてない地方の人からすると、行けたら行くわ、なども最近まで、行かない、という意味だとは知らなかったくらいなので。