配信開始日 2025年2月27日

「"結局他人事"に挑む追体験!『それでも夜は明ける』『ムーンライト』のPLAN Bらしい黒人史映画、つまり自分にとって特別になる作品ではないけど今を生きる私たちが一度は観るべきよくできた作品」ニッケル・ボーイズ とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5"結局他人事"に挑む追体験!『それでも夜は明ける』『ムーンライト』のPLAN Bらしい黒人史映画、つまり自分にとって特別になる作品ではないけど今を生きる私たちが一度は観るべきよくできた作品

2025年2月27日
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毎年のように賞レースに関わる ― "オスカーの釣り餌"と揶揄されそうな ― 優れた作品を製作してきたブラピの製作会社プランB。だけど、上記2作品同様、本作も明確な個性が作品を形作っていて、一緒くたに括ることは憚られる衝撃的でリスクテイカーな語り口・ストーリーテリングがファーストカットから否が応でも目を引くだろう。
つまり、主観POVショットで構成される本編。やもすれば鼻につくかもしれないが、その分、多くを映像で物語る。主人公2人の視点が順番に描かれたかと思うと、それからは交互に視点を切り返していくし、次第にどちらかの顔が画面に映らないと誰の視点で作品を見ているのか少し分からなくもなりそうな。
しかし、それによって本作は、"結局他人事"という世の中のあらゆる問題の根本的な命題に果敢に挑んでいる。だから、本作を観る僕らはまるで記憶の断片を遡るように追体験するように、黒人たちの苦しく悲しく広く知られるべき過去の経験を、"私事"として一番近くから疑似体験し目の当たりにするのだ。
更生施設ニッケル校、こうした施設で多くの命が奪われたこと(とそうしたトラウマな経験から生き延びたサバイバーがいたこと/今尚生きていること)を僕たち私たちは決して忘れてはいけない。封印されてはいけない記憶を伝える手段として、力強い表現の責務と可能性。最初と最後のカットが繋がる構成。一人じゃなく、誰かが理解を示すように歩み寄っては手を差し伸べてくれたら…。

勝手に関連作品『シュガーケイン』『13th』『ビール・ストリートの恋人たち』『ムーンライト』『それでも夜は明ける』

P.S. 封印された暗い過去にスポットを当てるため、"結局他人事"に挑む追体験!サミュエル伯父貴は映画化に際して大胆な手法を選び取った本作に、どういう感想を持つのだろうかと少し思った。

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