劇場公開日 2025年4月25日

「陽だまりの中で溶け合うような暖かさ」ただ、愛を選ぶこと 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5陽だまりの中で溶け合うような暖かさ

2025年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

この魂を揺さぶるドキュメンタリーでは、森で自給自足を続ける家族が最愛の母の死を経験し、言葉にしようのない想いと向き合いながら生きていく。と言っても、死を直接的に描くわけではないし、映画が絶望で押し潰されることもない。むしろテーマとなるのは癒しと再生だ。その絶えざる歩みを、家族の表情と内面を豊かに織り交ぜながら描き出す。たとえば、幼子たちは幼いなりに母の不在というものを懸命に理解しようと努め、年長の姉たちは弟たちの手前ずっと悲しみを我慢し続け、後になってふと感情が抑えきれなくなることもある。父親は父親で、生活費の問題や子供たちの教育をめぐる葛藤や決断を抱えている。たしかに問題は山積みなのだが、全ては時間が解決へと導いてくれる。ゆっくりと、じっくりと。そうやって歳月を重ねながら母への愛を噛みしめ、母が遺してくれたものを抱き締めて前に進んでいく過程が本当に温かい。この映画は陽だまりでいっぱいだ。

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牛津厚信